忍耐強く待っていたんだよ枯れない愛で。 ページ34
少し柔らかくなった雰囲気に緊張も解れてきたので、改めて、と目を会わせて笑う。
「久しぶり、だね。恭弥君」
「そうだね」
幼少の頃兆しがあったようにどうやら武道的にお強くなっているようだが、意外にも彼は女の子には優しく育ったのかもしれない。
あの頃は誰にでも冷たい印象があったけど、と感慨深くそしてなにより照れ臭さを感じながら嬉しく思う。
息子の成長を喜ぶ母のような心境だ。
「僕は何度か会いに行ったけど」
「えっ」
湯飲みにつけていた口から吹き出しそうになるのをなんとか耐える。
「帰国している情報が入った頃にはもう異国に飛んでいたからね、君は」
「そ、そうなんだ…」
吐き捨てるではないが、少し思うことがあるのかムッと唇をへの字に曲げた彼に場違いにも安心した。
この表情は変わってないな。
「日本での住所はわかっても、出先はわからなかったよ」
なんでそんなに調べてるんだか。
内心首をかしげながらもアハハと誤魔化すように目を反らす。
…一応そういう立場だし、研究チームの情報なんかが漏れないように色々措置はされているのだ。
私の身のためにもね。
促す静かな視線を受けて眉尻を下げる。
「お父さんの仕事についていったりとかしてたかな」
「ふぅん」
気のない返事にホッとして、言えないことができたのも成長に伴っているなと苦笑した。
なんとか覚えていたお手洗いの場所から、茶の間へ急ぐ。
さっき会った中居さんがにこやかに「お昼お届けしましたので恭弥さんと召し上がりくださいね」といってくれたからだ。
にしても本当に広いお屋敷だな、迷ってないよね。
キョロキョロと廊下を確認していると、ふと日当たりのいいその一室の障子に沿うように置かれているオシャレな和棚が目に入る。
その上に並べられたものを見て、ピタリと足を止めた。
あれ…？
ゆっくりと近づいて、見覚えのあるそれを両手で持ち上げる。
Cactus、と可愛い自体で書かれたガーデニングピックが刺さった鉢と、もうひとつ、こちらは日本産なのかサボテン、とそのまま鉢に表記されている。
どちらも数日前私を見送ってくれたサボテンだ。
少し萎みかけてはいるがサボテンにしては気強く、まだ花を咲かせている。
「これ…」
忍耐強く待っていたんだよ枯れない愛で。→←体と共に成長した情は消えるどころか甘やかに。
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サラダ(プロフ) - シオンさん» こちらこそ自分勝手に更新止まってしまって申し訳ないです。ただいま書いては書き直してを繰り返してますのでお見せできる文章になりましたらどうかお楽しみください！コメントありがとうございました！ (2019年9月22日 16時) (
レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 続きが気になります！自分勝手かもしれませんが、どうか更新よろしくお願いします。 (2019年9月17日 1時) (レス) id: 8d841be347 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - 白露さん» ありがとうございます！ページもいっぱいになったので次は3章に入っていきます！もう少々お待ち下さい！ (2019年8月6日 15時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
白露(プロフ) - とても面白くて一度に読んでしまいました。 続きが気になる…！(>ω<*) (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5376065075 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - きさん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません！分岐…考えたこともありませんでしたがそういうのもありですね！落ちは私のなかでは既にきまっていたようなものだったので、私が出来る限りで挑戦させていただきたいと思います！ (2019年6月29日 13時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラダ | 作成日時：2019年3月13日 19時
