お願いだから、最後まで踏み込ませないで。 ページ24
次々と教室から生徒が出ていくのを眺めて、オレンジに染まりかけている空を見上げた。
「珍しいですね」
「ん？」
「今日一日、どこか上の空でしたよ」
コト、と机に置かれた小さめのペットボトルの紅茶を見て、思わず眉尻を下げる。
「お金…」
「いりません、それよりどうかしたんですか？」
見る分には、同級生の男の子が心配してくれている青春の風景なのだが、失礼な話、六道君がすれば何もかもが違和感だ。
「六道君、ってさ」
変わらない穏やかな表情。
いつの間にか胡散臭さがなくなっていたのは、私の関与しない態度を汲み取った後、意味がないと悟ったからなのだろう。
「教室、似合わないよね」
寝ていない頭も相まって、ボーッと彼を見てバカみたいなことを呟く。
全部、似合っていない。
放課後の緋色が反射する教室も、古びた木製の椅子と机も、自販機に売られていたであろう甘ったるい飲料類でさえも、似合わない。
ただ大人っぽいからとか、外見が整っているからとかではなく、彼に根付いたその雰囲気がどこか違和感を浮き上がらせていた。
少し驚いて動きを止めた六道君が、真意を探るようにこちらに視線を寄せる。
違う、そうじゃない。
ハッとして目を反らす。
あれだけ怯えて核心に近寄ることを避けていたのに、無意識に彼の本質に触れてしまった。
らしくない、と苦虫を噛み潰したような顔をする私を見て、彼が頬杖をつく。
いつか見た光景だ。
「…貴方も十分似合っていませんよ」
静かに告げられたそれに、虚を衝かれるも、確かにそうかもしれないと納得してしまった。
「まぁ、その年で研究者として活躍しているだなんて世間離れもいいところです」
「活躍は、してないかな」
恐らく似合わない理由はそれではないが、濁してくれるのはありがたい、と思ったのに。
「…そういえば、どういう研究をしているんですか？」
「えっ」
忘れていたとでもいうように切り込まれた言葉に、眉を寄せる。
「僕も一応研究者やそういうものに重きを置いている方々の近くで生きていたときもありました」
「生きて…」
「そうですね、例えば…人体実験、とか」
早急かつ無理矢理な言葉運びの六道君もらしくない。
少女の姿が脳裏をちらつく。
人工的な赤い目、焦燥したような声…人体実験。
そういう考えにたどり着いてしまうのだ、今日の私は。
お願いだから、最後まで踏み込ませないで。
お互いを知って縮まった距離はこれ以上近づくことはない、と。→←まるで連想ゲームだ。
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サラダ(プロフ) - シオンさん» こちらこそ自分勝手に更新止まってしまって申し訳ないです。ただいま書いては書き直してを繰り返してますのでお見せできる文章になりましたらどうかお楽しみください！コメントありがとうございました！ (2019年9月22日 16時) (
レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 続きが気になります！自分勝手かもしれませんが、どうか更新よろしくお願いします。 (2019年9月17日 1時) (レス) id: 8d841be347 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - 白露さん» ありがとうございます！ページもいっぱいになったので次は3章に入っていきます！もう少々お待ち下さい！ (2019年8月6日 15時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
白露(プロフ) - とても面白くて一度に読んでしまいました。 続きが気になる…！(>ω<*) (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5376065075 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - きさん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません！分岐…考えたこともありませんでしたがそういうのもありですね！落ちは私のなかでは既にきまっていたようなものだったので、私が出来る限りで挑戦させていただきたいと思います！ (2019年6月29日 13時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラダ | 作成日時：2019年3月13日 19時
