隠れた棘では伝わらないことを知っている人。 ページ16
「あ…咲いてる」
ちょこん、と玄関先に置かれている見覚えのある小さな鉢を両手で持ちあげる。
愛らしさのあるそれに頬を緩めて、研究書類が詰め込まれたレザーバッグと、この七日間お世話になったキャリーケースを家の中に押し込んだ。
私の両の手に大事そうに持たれているそれを見て首を傾げる日辻君。
「…サボテン？」
ピンクに近い紫色の花を咲かせるサボテンをまじまじと見て、戸惑ったような声を出す。
「うん、多分ロビビア属の紫野だね」
「いつもより早い帰国だとは思ったけど…まさかそれを取りに行っていたのかい？」
それとも実験材料…？と一つだけ立派な花を咲かせるそれと私の顔を交互に見る彼に、首をふる。
「ううん、これは贈られもの」
「贈られもの…？」
贈り物として綺麗に手入れがされている鉢を指先で撫でて、珍しく小さく声を出して笑う私に、日辻君が眉をひそめる。
「気を付けたほうがいいんじゃないかな、一応棘のあるものだし」
「…そうだね、私もそう思うんだけど」
歯切れの悪い私に不思議そうな表情を浮かべる日辻君。
あまり触らないようにね、と言って先生のほうに去っていく彼を見送った。
どうやら今回の呼び出しはちょっとした調整報告のようなもので、両親との時間をたっぷり与えられた後に帰国させられた。
一週間前にはなかったサボテンの鉢は約三年前、中学に入る前ぐらいから匿名で贈られ始めたものだ。
最初の頃は気持ち悪いと思っていたそれだが、頻繁に贈られてくるわけではなく、私が日本に帰国したときにたまに玄関先に置かれているのだ。
どうやら花を咲かせたサボテンを置いていっているようなのだが、私が帰ってきたときには時間がたち萎んでいるものなどもあって、ストーカーなどではないと言うこともわかっている。
この五年間で私が一ヶ月以上日本の家に留まったことはほぼないので、逢ったことはない。
贈られてきたもので萎まずまともに咲いているのは初めて見たので、学校から帰宅したときに萎んでいるのは少し悲しいと、思わず学校に持ってきてしまった。
隠れた棘では伝わらないことを知っている人。→←尊敬しているかと聞かれれば…ね？
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サラダ(プロフ) - シオンさん» こちらこそ自分勝手に更新止まってしまって申し訳ないです。ただいま書いては書き直してを繰り返してますのでお見せできる文章になりましたらどうかお楽しみください！コメントありがとうございました！ (2019年9月22日 16時) (
レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 続きが気になります！自分勝手かもしれませんが、どうか更新よろしくお願いします。 (2019年9月17日 1時) (レス) id: 8d841be347 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - 白露さん» ありがとうございます！ページもいっぱいになったので次は3章に入っていきます！もう少々お待ち下さい！ (2019年8月6日 15時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
白露(プロフ) - とても面白くて一度に読んでしまいました。 続きが気になる…！(>ω<*) (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5376065075 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - きさん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません！分岐…考えたこともありませんでしたがそういうのもありですね！落ちは私のなかでは既にきまっていたようなものだったので、私が出来る限りで挑戦させていただきたいと思います！ (2019年6月29日 13時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラダ | 作成日時：2019年3月13日 19時
