善人と呼ばれることを嫌う君に痛い勘違いなどしてやらないよ。 ページ19
私の横についていた手の肘が軽く折られて、屈み顔を近づけてくる六道君から逃げるように背を反らす。
一歩も下がらないうちに本棚についてしまった背に、内心焦りながらも真顔になる。
「普通ここは顔を赤らめるところでは？」
「なんで？六道君、どいて」
壁ドン状態になっている彼の棚についていない右手から、料理本を抜き取って、両手で持ったそれで彼の胸を押す。
「生憎僕は善人ではないんですよ、勿論見返りを求めています」
「明らかに善人そうな見た目して何言ってるの」
どいて？ともう一度ゆっくり彼の目を見て言う。
ピクリと一瞬彼の柳眉が動いたのを見て、あぁ間違えたかな、と冷や汗をかいた。
必死に保っている無表情が防衛的なものだということも恐らく気づかれている。
本を手から抜き取ったのは間違いだったかもしれないと、私の髪を右手で掬い上げた彼を見て思う。
彼の瞳が、至近距離で嘲笑うように細められるのを負けじと見つめた。
ドクドクと血液が逆流するような感覚。
トキメキなんて甘いものではなく、…また覚えのある警告音だ。
見つめあって数秒、間近の彼の視線がチラリとわざとらしく少し下にさげられたのを確認して、体が強張る。
唇を視線で追って、また私に目を合わせてくる。
まるでキスの了承を求めるようなその仕草に、彼に押し付けるようにしていた本を持つ両手に力が入る。
また僅かに縮む彼との距離、力強い視線に絡め取られて動けない私の頬を撫でた六道君が尚もその大きな背を屈める。
気恥ずかしさと、自責の念に駆られて、グッと力を入れた両手を衝動のまま振り上げた。
「ッ！」
六道君が微かに息を呑む声が聞こえる。
突然六道君と私の僅かな隙間に壁のように割り込んできた料理本。
さすがに驚いたのか本棚についていた手を離し、私から少し距離をとる六道君には恐らく里芋の煮物の表紙が見えていることだろう。
顔の前にあった
「…お弁当じゃ、だめかな」
ハハハッと誤魔化すように笑って、口をついて出たのはそんな場をしのぐ間抜けな提案だった。
さすがにおば…私の唇では可愛そうだろう？
それなら年季の入ったお弁当の方が価値があるはずだ。
善人と呼ばれることを嫌う君に痛い勘違いなどしてやらないよ。
どうせ指摘しても、君だけだよっていうんでしょ？→←…そんな顔もできるんだね、嫌な予感しかしないけど。
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サラダ(プロフ) - シオンさん» こちらこそ自分勝手に更新止まってしまって申し訳ないです。ただいま書いては書き直してを繰り返してますのでお見せできる文章になりましたらどうかお楽しみください！コメントありがとうございました！ (2019年9月22日 16時) (
レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - 続きが気になります！自分勝手かもしれませんが、どうか更新よろしくお願いします。 (2019年9月17日 1時) (レス) id: 8d841be347 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - 白露さん» ありがとうございます！ページもいっぱいになったので次は3章に入っていきます！もう少々お待ち下さい！ (2019年8月6日 15時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
白露(プロフ) - とても面白くて一度に読んでしまいました。 続きが気になる…！(>ω<*) (2019年8月3日 18時) (レス) id: 5376065075 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - きさん» 返信遅くなってしまい申し訳ありません！分岐…考えたこともありませんでしたがそういうのもありですね！落ちは私のなかでは既にきまっていたようなものだったので、私が出来る限りで挑戦させていただきたいと思います！ (2019年6月29日 13時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラダ | 作成日時：2019年3月13日 19時
