本人は気付かぬ兆候なのだ。 ページ41
持ってきていた宿題のワークを開けて、鉛筆をスラスラと動かしていく。
隣で手持ち無沙汰に教科書を流し見ている恭弥君に申し訳なくなりながらも、疑問に思っていたことを口にしてみる。
「恭弥君宿題は？」
「僕、無駄なことに時間を裂きたくないんだ」
言いたいことはすごくわかる。
喋りながらでも止まることのない手元は、まだ新しい小学三年生の漢字のドリルを次々と埋めていく。
恭弥君の頭のレベルがどこまでいっているのかはいまだに謎であるが、私たち二人にとってこのドリルは無駄なものでしかないだろう。
中学ぐらいになったらつまづく箇所も出てくるのかな、というのが教育課程が既に終了している大人の見解だ。
「A、42ページ」
「モチモチの木、斎藤隆介〜全く、豆太ほどおくびょうなやつはいない。〜」
一応持ってきていた国語の教科書から、まるで私で遊ぶようにたまにページ数だけを言いそのページを暗唱させられる。
まぁそれで恭弥君の退屈しのぎになるのならいいけどと開始十分、終わりそうなドリルからチラリと恭弥君を見ると、暗唱が一言一句間違っていないことに何故か満足そうに鼻をならす。
「楽しい…？」
「うん、Aの記憶力は異常だからね」
記憶力が異常、とはどういうことだろうか。
確かに両親の前で形だけでも、と勉強しているふりをするときに読んでいる教科書はすべて暗唱できるほどに覚えてしまっているが、それは幼児の頭が柔らかく覚えやすいからだ。
初めて気づいたときには感動したし、おそらくやろうと思えば誰にだってできるだろう。
「恭弥君にだってできるでしょう？」
「無駄だからしない、父さんの書物ならできるものもあるね」
流石だ。
終わったドリルを片付けながら、恭弥君のお母様が出してくれていたお茶に手をつける。
「けど、Aは普通じゃない。だってこれまだ新しい教科書だよ」
普通じゃない人に断言されるのは結構堪えるな、と苦笑した。
本人は気付かぬ兆候なのだ。
カルチャーショックは止まらない。→←頭が良くても性格がそれに伴うわけでは無いんだよね。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 493人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「リボーン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ドク(プロフ) - 一話一話、必ず笑うか、感情が動かされます。ピンポイントで笑う箇所を作るのがすごすぎる……そして面白すぎる…！！これからも頑張ってください！！ (10月7日 14時) (
レス) @page10 id: f0778d3186 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - ぴょんさん» 私も貴方の感想の表現の美しさにため息が出ました…。負けないように頑張ります！笑 (2019年3月16日 23時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
ぴょん(プロフ) - 言葉の表現が美しくて読むたびにため息が出ます…。これからも陰ながら応援させていただきます。 (2019年3月16日 20時) (レス) id: a5b956ec79 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - カナさん» ありがとうございます！楽しみにしてくれていると思っただけで創作意欲がわいてきます！頑張ります！ (2019年3月12日 17時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - 死に急ぎガールさん» そう言ってもらえてとても嬉しいです！幼少期の雲雀さんとの何気ない日常はお楽しみいただけたでしょうか笑これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします！ (2019年3月12日 17時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：サラダ | 作成日時：2019年1月25日 22時
