ちょっと私には荷が重い気がします。 ページ34
心なしか楽しそうな恭弥君のお母様が少し弾んだ声を出す。
「苦しくないかしら？」
「はい」
鏡に写った私は、白地に薄紫色の花が大きく咲いている着物を着付けられていた。
お母様のお古だと言うそれは、私の世代の子には少々大人っぽすぎる気がするけれど、お母様が似合っていると言うのならそうなのだろう。
今世では浴衣しか着たことがなかったので、前世で最後に着たのはいつだったかなと考えて見れば成人式を思い出した。
…もう友達の名前も数人しか覚えていないな。
冷たい人間だな自分は、と自嘲的な笑みを漏らす。
最近はなんだかよく前世のことを考えてしまうことが多い気がする。
本能的に忘れないようにしているのだろうか。
「Aさん？」
いつの間にかうつむいていた顔を急いで上げてみれば、心配そうな表情で鏡越しに私を見ているお母様。
数日前の恭弥君の表情と被って、あぁ親子だな、と笑ってしまった。
基本的にお父様似の恭弥君だがどうやら両親のいいところをしっかりと受け継いで生まれてきたらしい。
「ごめんなさいね？私娘が欲しかったものだから…付き合わせちゃって」
眉を下げたお母様に急いで首を振る。
「いいえ！とても嬉しいです、こんな綺麗なお着物私に着せてしまって大丈夫なんですか？」
それに若いのにこれから娘なんていくらでも作れるだろう。
幼女なのでそんなこと言えないけど。
「ええ、私のお古で申し訳ないわ。Aさんの年のころに一度着ただけで捨てるにも捨てられなかったの」
着てくれて嬉しいと笑って、今度は鏡台の前に促される。
「…Aさんが娘になってくれてもいいのよ？」
悪戯に微笑む彼女に苦笑いを返した。
ちょっと私には荷が重い気がします。
君のお父様を盗るような真似はしないから安心して？→←美形に囲まれたらもう目の保養どころじゃない。
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ドク(プロフ) - 一話一話、必ず笑うか、感情が動かされます。ピンポイントで笑う箇所を作るのがすごすぎる……そして面白すぎる…！！これからも頑張ってください！！ (10月7日 14時) (
レス) @page10 id: f0778d3186 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - ぴょんさん» 私も貴方の感想の表現の美しさにため息が出ました…。負けないように頑張ります！笑 (2019年3月16日 23時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
ぴょん(プロフ) - 言葉の表現が美しくて読むたびにため息が出ます…。これからも陰ながら応援させていただきます。 (2019年3月16日 20時) (レス) id: a5b956ec79 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - カナさん» ありがとうございます！楽しみにしてくれていると思っただけで創作意欲がわいてきます！頑張ります！ (2019年3月12日 17時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
サラダ(プロフ) - 死に急ぎガールさん» そう言ってもらえてとても嬉しいです！幼少期の雲雀さんとの何気ない日常はお楽しみいただけたでしょうか笑これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします！ (2019年3月12日 17時) (レス) id: c38cbec620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラダ | 作成日時：2019年1月25日 22時
