彼の前髪 ページ20
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律「え?あの大きなビジネスホテルの中のバーで?」
『そうなの!もう何回かは出勤してるけど、結構楽しい』
律「それならよかった」
そんなこんなで夏休み明けの後期授業。律くんと昼食を食べながら、バイトのことを話す。タイミングが合えば一緒に帰れたりするかもね、なんて話しながら彼を見る。
『そういえば、前髪あげてないんだね』
夏祭りと一緒に出掛けていたときには上がっていた前髪が、だらんと下がっている。
律「あぁ…」
『あっ!入学式の時にさ、もっと仲良くなったら前髪伸ばしてる理由、教えてくれるって言ってたよね?それまで僕の前髪に興味持っておいて、って言って笑』
律「やめてよ恥ずかしい笑」
律くんの声真似をしながら、お互いに笑い合う。
律「…。実はさ、」
「あのぉ、お話中ごめんね。紀元律くん、だよね?」
声のする方に振り返ると、女子が数人立っていた。授業で何度か見かけている顔だから…多分同じ学科の同級生。律くんをにこにこしながら見つめている。
律「そう、だけど」
「あのさぁ、夏祭り…来てたよね?甚平着て、その…髪を全部後ろに束ねて…」
「その、春野さん…だっけ?と話してるとこ、うちら見たんだよねぇ」
「そうそう!しかもあなた、紀元くんって呼んでた!ってことは…でしょ!?」
質問に答えない律くんをチラリと見ると、気まずそうに顔を俯かせている。
『…仮にそうだとしたら、何かあるの?』
「律くんの…連絡先を知りたいなって」
『(律くん呼びに変わってる…)』
少し頬が赤くなっている彼女たちを見て、律くんが前髪を伸ばしている理由がわかった気がした。
律「悪いけど…僕、あんまり仲良い人としか連絡先の交換は…」
「きゃー!僕だって!かわいい〜♡」
「じゃあこれから仲良くなればいいじゃん!さ、交換しよ!」
「はい、携帯携帯♪」
強引すぎる様子に思わず立ち上がる。
『律くん、そろそろ時間じゃない?』
律「え、あ…そうだね!じゃあ…」
「え!?ちょっと!!」
半ば強引にその子たちから抜け出し、食堂を早足で出る。
律「ごめん、助かったよ。ありがとう」
『ううん!』
律「…。ああいうのなんだよ。僕が、こういう髪型をする理由」
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みびみやこ(プロフ) - おバカな莉久(サブ)さん» はじめまして。凄く好きだと言って頂けてとても嬉しいです!必ず完結までいきつきますので、お待ち頂けますと嬉しいです。これからも当作品をよろしくお願いいたします。 (2022年2月10日 19時) (レス) id: e70206d298 (このIDを非表示/違反報告)
おバカな莉久(サブ) - はじめまして!このお話凄く好きです!更新再開(?)おめでとうございます!無理だけはしないでください!これからも更新ゆっくり待ってま〜す! (2022年2月9日 22時) (レス) @page38 id: ddd40ab2e7 (このIDを非表示/違反報告)
みらい - みびみやこさん» わああっおかえりなさい、待ってましたー!ゆっくりで全然大丈夫なので、無理せず頑張ってください…! (2022年2月8日 1時) (レス) id: 942628a425 (このIDを非表示/違反報告)
みびみやこ(プロフ) - みらいさん» 返信が遅くなり申し訳ございません。この度、更新を再開しました。待っているという言葉、すごく励みになります!更新頻度についてはゆっくりではありますが、完遂しますので最後まで見守ってくださると嬉しいです! (2022年2月6日 21時) (レス) id: 9a02bb3167 (このIDを非表示/違反報告)
みらい - 更新停止…寂しい…でも私はいつでも待ってます!って言ったらプレッシャーになっちゃうかな…もし戻ってきたら私も戻ってきます、この作品を忘れません!ってことです。リアルでの生活も、無理しないように頑張ってください…! (2021年12月27日 22時) (レス) id: 942628a425 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みびみやこ | 作成日時:2021年9月28日 14時