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G線上のアリア ページ6







太陽の日差しが本気を出している四限目。

二年一組は体育でサッカーをしていた。
男女別で行っていたはずだが、女子が男子の応援をしにサボりに来たことでどうやら自然と男女混合になったようだ。


季節が秋に変わってからしばらく経っているはずなのに、まだ熱が下がらない残暑が続いていた。

サッカーをしていないクラスメイトは、公衆トイレのおかげで出来た小さな影の中にぎゅうぎゅう詰めになっていて、外だと言うのに汗を拭いた制汗剤の匂いが充満した。


なかなか変化しない点数と日差しで観戦組の集中力が切れ始めた時。

バコーンと大きな音が鳴ったと思えば、宮治の顔にサッカーボールが勢いよく当たっていた。


大丈夫かよ と心配のヤジが飛んでいる中、体育教師が保健委員を呼び始めた。

のそりと立ち上がり宮治の方に向かったのは、林檎だった。


林檎は二組の保健委員なのだ。


「悪いが林檎、保健室に宮のこと連れてってくれないか?」

「あー、はい。分かりました」


宮治は意識はハッキリしているようで、林檎の後に続いて保健室に向かった。




「…すみませーん」


林檎は保健室のドアを開け養護教諭を呼んだ。

しかし保健室は物音ひとつせず静まっていて、林檎は養護教諭が出張だということを思い出した。


「血が出てるから、とりあえず止血処理だけしようか」

「おん、ありがとう」


丸椅子を二つ向かい合う様に並べ、救急バックから消毒とティッシュを取り出した林檎は、無言で処置を始めた。



沈黙が続く。

時より傷に消毒が沁みるようで、宮治が いっ… と唸りながら我慢しているようだ。


無心で消毒をし続ける林檎を見るなり、宮治は口を開いた。


「…林檎さんは、兄弟とかおらんの?」

「……居たかどうか分かんない」

意味のわからない返答が帰ってきたことに、宮治はさんかく眉を器用に動かした。


「え?記憶喪失なん?」

宮治は少し笑い気味に林檎に問いかけた。あまりにも有り得ない話を出して冗談のように言ったのだ。


「違うよ。養子なの、私」


少し宮治を見て、また処置を始めた林檎を、宮治は見つめていた。
思っていた何倍も重い話になってしまったと感じて、話を繋ぐのに気が引けた。


「…悪い」

「別にいいよ」


そう言う林檎の瞳は静かに揺らいだ気がした。


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作者名:川畑。 | 作成日時:2023年9月10日 13時

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