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G線上のアリア ページ5

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金曜日の朝。

明日が休日だからなのか、今日の授業は変更が多くて座学が少ないからなのか、二年一組はいつにも増して教室が騒がしくなっていた。

ガラガラと横引きのドアが開閉される音が止むことはなく、次々と生徒が登校していた。


そこには目立つであろう眼帯をつけた女子、林檎の姿が見えなかった。

林檎はSHRが始まる少し前に来ているのだ。


クラスの担任が来る直前に来ては自席に付き、背もたれに重心を置くように座った。


そんな林檎に、飴屋は無意識に視線をやっていた。

SHRが終われば案の定飴屋は林檎に近づいてきた。


「あ、あの林檎さん!」

名前を呼ばれゆっくりと目線を飴屋に向ける林檎は、無言で飴屋の次の言葉を待った。

「あの…友達とか、なってくれませんか?」

林檎は少しだけ目を丸くした。予想外の出来事だったのだろうか。

「友達とか、私いた事ないから…よく分からない」

林檎は友達がいたことがないらしい。

やっぱりそうか と林檎の雰囲気を客観的に見ては納得出来なくもないが、本人に直接言われ飴屋は罪悪感に襲われた。

「ご、ごめんなさい…じゃあ!初めての友達になりませんか?」

飴屋は気が弱いように見えて頑固のようだ。


「…好きにしたらいいと思う」


林檎にそう言われ、飴屋は分かりやすく舞い上がった。

どうやら飴屋も初めての友達のようだった。

林檎はどこか照れくさくなって教室を出て行先も無いのに廊下を歩いた。

「あ、林檎さん。昨日箒出しっぱだったでしょ」


その声は頭上から降ってきて、顔をあげれば昨日話した角名倫太郎。

角名は分かりやすく不服そうな顔をする林檎に対し、独特な笑い声を上げていた。

「それはごめん、角名くん……宮侑」

「惜しいな、治のほうやわ」

角名の後ろからひょこりと顔を出したこれまた高身長の宮治は、関西独特の方言を使っているようだ。


「侑はもっとうるさいからね、こっちは静かだから治」

「やかましいわ」

角名がいかにも分かりにくい説明をしたせいで、宮治は不機嫌そうな顔をして軽く頭を引っぱたいた。


その一部始終を見ていた林檎はピクリとも顔の表情筋を動かすことはなく、気がつけば教室に戻っていた。




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作者名:川畑。 | 作成日時:2023年9月10日 13時

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