プロローグ。 ページ1
最初に気づいた違和感。確か、小学校五年生ぐらいだっただろうか。少年は、それに首を傾げた。何に対しての違和感なのだろう。ぐるぐると部屋を見回した。この部屋の持ち主である友人は、お茶を取りに、部屋を留守にしていた。
「おれの気の所為かなあ……？」
違和感の正体がわからず、つい部屋中をごろごろと転がった。すると、ガチャリとドアが開き、戻って来た友人が、訝しげに首を傾げる。
「……何やってんの？」
「あ、おかえりみどりん……みどり？」
ふと、友人のあだ名を呼び、違和感が大きくなる。それに対し呼ばれた友人は、組み立て式のテーブルの上にお茶の入ったコップを置きながら、
「そうだけど。何、変なものでも食べた？」
いつにも増して変、と友人にしては辛辣なことを言った。変なのは事実なので、少年は、言い返さず、というより別のことに意識を持っていかれていたので、反応は無い。その代わり、震えた声で、
「……高峯、翠？」
友人ーー
「だから、そうだって。何だよ、本当に。もしかして、頭でも打ったの？」
心配そうに高峯が少年の顔を覗き込む。
「……いや、大丈夫。なあ、みどりん」
「な、何……？」
「みどりんってさあ、アイドルになりたい？」
「はあ？」
何言ってんの。再び同じ言葉を高峯が放つ。それもそうだ、友人が部屋を開けたら転がっていて、心配して声を掛けたらいきなりアイドルになりたいかと聞かれ。小五だというのに高峯の眉間のシワは深まるばかり。
「いや、特に意味は無いんだけど！んー、みどりんは、その、前世って信じてるタイプ？」
にかっと元気に笑いながら少年は聞いた。高峯は。
「……ねえ本気で何言ってんの？今日の明音変だよ？転がってるのはまだ良いとして、前世とかって、」
「あっはははは！ごめん、みどりん、冗談！」
こういう話得意になりたくって、なんて精一杯誤魔化して、笑いながら少年は、高峯のその先言おうとした言葉を遮った。
「……そう、なの？」
「うんうん、本当だよ！じゃあこの話はお終い！今日は何して遊ぶ？」
外でミンミンと蝉が鳴いている。五月蝿い五月蝿い蝉の声が窓を閉めても聞こえていた。
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作者名：彩織 | 作成日時：2017年8月19日 0時
