11話 ぷつん、 ページ12
バッ、とフェンスから手を離し思わず後ずさる。なんだ、と思えば部屋に入ってきた父親の叫び声。振り向くと、酔っ払った彼がぶっ倒れていた
｢A〜｣
｢...｣
へらへらと顔を真っ赤にしながらニヤける彼は相当酔っている。顔はこちらに向いて入るが、腕に抱いているものは確実に私ではない。スリスリと頬をスられているぬいぐるみに同情を覚えた。
きっとあのぬいぐるみを私だと思っているのだろう。もし、あの場所にぬいぐるみではなく私だとすれば想像するほど気分が悪くなる
取り敢えず、今はほっておくのが懸命だろう
部屋に戻り窓を閉めると、彼が寝転んでいる所を跨いで階段を降りた。リビングに行き料理を済ませ机に食器を並べていた彼女は、私を見て彼を聞いてきた。今も酔い潰れて倒れている父親の事を言うと、笑ってうんと頷いた
｢あの人ったらね、家に帰っくるなり『Aはどこだ〜』って言って酔っ払いながら２階に行っちゃったのよ｣
なる程。だから工事現場の仕事服で寝転んでいた訳か。でもなんであんなぬいぐるみを持っていたのだろうか。...抱き枕、でも無さそうだが
どちらにしろ、彼が来たことでさっきまで私が実行しようとした行為は止められたのと同じ。もう少し早くやっていれば、この世からおさらば出来たかもしれなかった。あるいは、生きて彼らを悲しませるか
どちらにしろ、結果は変わっていたかもしれない
彼を起こしに行くと言ってリビングを出て行った彼女を見送り、私は自分の席に座って机に置かれているご飯を食べながら、テレビをつけたが特に興味を示す番組は無かったので適当に今やっているニュース番組をつけた
［ニュース速報です。今朝、〇〇県〇〇市の住宅地で火災事故が発生しました─］
｢...っ！｣
映像が映った瞬間思わずリモコンを落としてしまう。頬に汗が垂れ、手足が震える
映像に移された家が燃える炎の様子に、体が震え、意識が乱れていく
"あの日"の、記憶が蘇ってくる
『痛いよ、痛いよおねえちゃん。助けて...タスケテ...』
｢あ、ああ...｣
『A...っ、逃げなさい！！--を連れて逃げてっっ』
｢い...いやっ｣
ガタンっ、と音をたてひっくり返る椅子の音が響く。思わず立ち上がると、震えた手で腕を何度も上下に撫でる
『A、お前は生きるんだ...私達を置いて逃げろっ...ニゲ、ろ』
｢ああああああああああああああああっ！！！！｣
ぷつん、と何かが切れた音がした
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 268人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蓮@(プロフ) - 闇の道化師さん» ありがとうございます！喜んでもらえたのなら作者も嬉しいです。更新頑張りますね (2017年3月8日 18時) (
レス) id: 265fac0211 (このIDを非表示/違反報告)
闇の道化師 - こういう作品大好きなので頑張って欲しいです！これからも頑張ってください♪ (2017年3月7日 23時) (レス) id: a4c5ed2f5a (このIDを非表示/違反報告)
蓮@(プロフ) - (名前)さん» ありがとうございます！楽しんでいただけるよう作者も頑張ります。 (2017年3月5日 22時) (レス) id: 265fac0211 (このIDを非表示/違反報告)
(名前)(プロフ) - お返事ありがとうございます。私もハッピーエンド好きなので嬉しいです。更新頑張って下さいね。 (2017年3月5日 21時) (レス) id: f2e5b2371a (このIDを非表示/違反報告)
蓮@(プロフ) - (名前)さん» 落ちは決まっています！作者はハッピーエンドが好きなのでそうしようかなと思っています！一応話はシリアスメインですけどね (2017年3月5日 20時) (レス) id: 265fac0211 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
