ケージ:126 ページ30
エーミール先生の手に握られていたそれは、確かに間違いなく私が書いた手紙だった。
でもどうして。それは部屋の机の中にしまってあったのに。
理解が追い付かない。私の知らない間に、部屋に入ったの？まさか。エーミール先生はそんなことしない。絶対にしない。するような人じゃ、ない。
答えが欲しくてエーミール先生を見つめれば、彼は口元に薄く笑みをたたえて無言で首を傾げた。
ぞわりと鳥肌が立つ。言い知れない恐怖に唇が震えた。
「誰の入れ知恵ですか？」
炎が揺らめく。
暑くもないのに、背筋に嫌な汗がつたった。頭の奥で誰かが警鐘を鳴らしている。
機械的な、のっぺりとした声。
こんなに威圧的なエーミール先生は見たことがない。グルッペンさんと同等か、いや、もしかしたらそれ以上かもしれない。
明確な敵意や悪意の方がまだ分かりやすくてよかったかもしれない。
これは得体がしれない。
逃げるべきなのか、向き合うべきなのかも分からない。ただひたすらに恐ろしい。下手を打てばすぐにでも喉笛を掻き切られてしまいそうな、そんな切迫した空気が全身を包んでいる。
「ご、ご……めんなさ、い。」
震える唇で辛うじて紡げたのは、謝罪だった。エーミール先生はなにも言わない。表情も変わらない。ただ私をじっと見つめるだけ。
それが一層不気味で、意図せず視界が歪んだ。駄目だ、泣くな、泣くなと思うのにゆっくりと目頭が熱くなって喉が震える。
「え、えーみ、るせんせ。」
私が黙って出ていこうとしたことを怒っているのか、それとも別の何かなのか。
エーミール先生の考えていることが、さっきからずっと分からない。
にゅう、と生白い手が蛇のように伸びてくる。咄嗟に逃れようと、慌てて後退った。足がもつれる。
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かぼちゃ(プロフ) - この作品大好きです。最高です。何度も読み返しています。主人公が可哀想で可愛い。仄暗さが最高です。更新いつまでも待ってます。 (9月29日 0時) (
レス) id: af8b6c02d3 (このIDを非表示/違反報告)
さく - 続きは何処…！ (2022年11月18日 7時) (レス) @page32 id: 77c841469d (このIDを非表示/違反報告)
バカふわ - 続きと結末が気になります！ (2022年9月27日 21時) (レス) @page32 id: 95afcd7436 (このIDを非表示/違反報告)
りこち(プロフ) - すきです！！とくにz脅威さんの台詞の吃り方が天才です！！！！すき！！！！ (2021年2月21日 15時) (レス) id: 7094782543 (このIDを非表示/違反報告)
あか - とっても好きです！？！？！？！描写がとっても素敵で....更新ゆっくり待ってますね！！ (2020年5月23日 16時) (レス) id: 2c4cbba459 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちくわ | 作成日時：2020年2月26日 20時
