ケージ:92 ページ45
二度、三度と繰り返していればだんだん噎せることは少なくなってきていた。
女特有の柔らかい甘い匂いが、煙草の香りに塗りつぶされていくのが何とも背徳的で楽しい。
もともと少ない口数が更に少なくなって、くたりの体から力が抜け始める。
「へーきっすか。」
「……も、う、吸えないです。」
「くらくらする?」
「……。」
「ふふ。」
こくりと頭が縦に揺れる。肯定だ。所謂ヤニクラの状態だろう。
悪くない気分だ。ヤク浸けにしたみたいでなんか興奮する。笑うわ、俺、こんな性癖あったっけか。
「で、何悩んでたんです。」
あんな廊下でぼーっと突っ立って。
残りの煙草を吸いながら、あくまでどうでもいい、という風を装って尋ねた。
彼女は分かりやすい。顔に出やすいのだ。恐怖も不安も動揺も、負の感情は特に。
だから、からかいたくなる。
「……。」
「教えてくださいよ。」
口ごもる少女の頬をつついた。ふにふにとして柔らかい。指だけじゃ物足りなくて、唇を寄せた。そのままするりと縦に滑らせると、ぴく、と華奢な肩が揺れる。けれど先程までの抵抗はない。余程煙草が効いているらしい。
「っう……ろ、……ぼろさん。」
「ん?」
「ロボロさんが……。」
「……ロボロさんが?」
「へん……で、なんか、変。で……。」
「は?」
「げんき、な…………ひっ?!」
「くだらんなあ。」
大方、今朝の事だろう。
今朝、というかあれは少し前からだったように思うけれども。
あの人の中で決定的な何かがあっただろうことは察している。なにかは知らんけど。
ただ、想像はついた。
ぐ、と少女の頬をつまむ。
途端に力が籠る体がなんともいえずいじらしくて笑いそうになった。
むにむにとこねくりまわせば「ひゃ」とか「うう」とかよく分からない情けない声が度々漏れる。
「あの人は、"ええ人"すぎるんや。我慢なんて下らんことしとらんと、したいことすればええのに。」
俺みたいに。
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えある。 - zmさんかわです。天才がここにいるっ!主さん神ですね!応援してます〜 (2023年4月6日 10時) (レス) @page16 id: 9c1c96d73e (このIDを非表示/違反報告)
(名前) - ゾムさんが可愛すぎるっぴ…キャラ崩壊してるっぴ。いつものかっけえゾムさんどこ言ったんだ……最高 (2020年4月13日 15時) (レス) id: ca685f05f7 (このIDを非表示/違反報告)
ちくわ(プロフ) - (´ω`)ウドンタベタイさん» コメントありがとうございます。お褒めの言葉、もったいないくらいです。とっても嬉しいです。自己満で書き始めたものですが、少しでも多くの人に楽しんでもらえれば幸いです。 (2020年2月26日 20時) (レス) id: bceee2f54e (このIDを非表示/違反報告)
ちくわ(プロフ) - neccoさん» コメントありがとうございます。アワ……めちゃめちゃ恐縮ですが嬉しいです。応援もありがとうございます、こつこつがんばっていきます。 (2020年2月26日 20時) (レス) id: bceee2f54e (このIDを非表示/違反報告)
(´ω`)ウドンタベタイ - ちくわさんの書く小説ほんと好きです!語彙力があるところ、表現の仕方がとても素敵です。リピーター続出ですね(*´-`) (2020年2月25日 22時) (レス) id: 43fae56533 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちくわ | 作成日時:2019年9月29日 11時