ケージ:87 ページ40
すっかり熱を失った両手を呆然と下げ、小さく呟いた。
「おれは、なにをしとるんや。」
生々しい傷痕が、急速に頭を冷やしていく。
守りたかったはすだ。
遠ざけたかったはずだ。
彼女を毒するあらゆるものから。
ちいさくて、よわくて、一人じゃなんもできん女の子。
今まで辛い目に遭って来た分を、笑って取り戻していって欲しい。
こんな、こんなところにいたら、彼女は変われない。
閉じ込める人間が変わっただけだ。こんなの飼い殺しだ。親愛じゃない。友愛でもない。そんな綺麗なものじゃない。だって、あんなに、歪んでいる。
おれはちがう。ちがう。だから守ってやれる。そうだ。おれなら。おれは、あいつらとはちがうから。
そう思っていた。
何が違うのか。
何も違わないんじゃないのか？
触れた肌の感触が手に残っている。鼻にかかった甘い声が鼓膜にこびりついて離れない。柔い肌に歯を立てたあのとき、血がでるくらいに噛みついて泣かせてやりたいなんて、一瞬そう思った。
ああ、おれは、たぶんきっと、ほんとは。
「……。」
彼女の首もとに顔を寄せると、甘い香りが濃くなる。部屋の香りと同じだ。
柔らかい。壊れそう。守りたい。弱くて小さくて脆くて、儚い。
なのに、それなのにどうしてそれと同じくらいに。
壊してしまいたいなんて、思うのだろう。
ずるりと雑面をずらせば、余計に鮮明に少女の姿を捉えてしまって後悔した。
薄暗い部屋に、桃色の瞳が光る。朱の交じったそれは、懸命に何かを堪えているようだった。
「おれ、は。」
きもちがわるい。さいあくだ。最低で、最悪の気分。
庇護欲と征服欲がごちゃまぜになって、吐きそうになった。
震える手でぎゅう、と少女を抱きすくめる。何も抵抗しない。
「おれは……。」
それ以降、部屋に声が響くことはなかった。
何も知らない少女だけが、小さな寝息をたてて静かに眠っていた。
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えある。 - zmさんかわです。天才がここにいるっ!主さん神ですね！応援してます〜 (2023年4月6日 10時) (
レス) @page16 id: 9c1c96d73e (このIDを非表示/違反報告)
（名前） - ゾムさんが可愛すぎるっぴ…キャラ崩壊してるっぴ。いつものかっけえゾムさんどこ言ったんだ……最高 (2020年4月13日 15時) (レス) id: ca685f05f7 (このIDを非表示/違反報告)
ちくわ(プロフ) - (´ω`)ｳﾄﾞﾝﾀﾍﾞﾀｲさん» コメントありがとうございます。お褒めの言葉、もったいないくらいです。とっても嬉しいです。自己満で書き始めたものですが、少しでも多くの人に楽しんでもらえれば幸いです。 (2020年2月26日 20時) (レス) id: bceee2f54e (このIDを非表示/違反報告)
ちくわ(プロフ) - neccoさん» コメントありがとうございます。アワ……めちゃめちゃ恐縮ですが嬉しいです。応援もありがとうございます、こつこつがんばっていきます。 (2020年2月26日 20時) (レス) id: bceee2f54e (このIDを非表示/違反報告)
(´ω`)ｳﾄﾞﾝﾀﾍﾞﾀｲ - ちくわさんの書く小説ほんと好きです！語彙力があるところ、表現の仕方がとても素敵です。リピーター続出ですね(*´-`) (2020年2月25日 22時) (レス) id: 43fae56533 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちくわ | 作成日時：2019年9月29日 11時
