ケージ:78 ページ31
大袈裟に肩が揺れる。
ば、と後ろを振り向けばそこに立っていたのはしんぺい神さん。
大きめの瓶を何本か抱えて立っている。
「しん、ぺ、さ」
掠れて上擦った声。
声なんか出すんじゃなかったと後悔するほど動揺が表れたそれに、しんぺい神さんはこて、と首を傾けた。
「なんや、ひどいかおしとるで。」
どしたん？と近寄ってくる彼の足取りは覚束ない。眠たいのだろうか、と思ったけれどどうやら違うらしい。私の肩を抱くしんぺい神さんからは、ふわりとアルコールの香りがした。
「し、しんぺい神さん、酔っ払って……。」
「んん、なに？」
「！わ、たし部屋に、部屋に戻ります。」
雑面に覆われた顔が近づく。普段の彼と比べると無遠慮とさえ思えるそれに、長居はよくないと私は咄嗟にしんぺい神さんから離れる。
しかし逃がさない、とでもいうかのように彼の手が私の手首をとった。そのまま引き寄せられる。
「んな、しにそなかおしとるんに、そのままにできへんやろ。」
「そ……れは。」
「手ぇも、えらいつめたいで。」
手首を握っていた手がするりと私の手を覆う。
自分の手が冷たいかどうかは分からないけれど、しんぺい神さんの手は酷く熱を持っているように感じられた。
__あたたかい。いっそ、熱いくらいだ。
「な、あったまっていき。んな、からだつめたいまんまやねれんわ。」
「だ……、だめです。もう、戻らないと、それにわたし……」
今優しくされたら、泣いてしまいそうだなんて。
そんなことは、言えない。
口をつぐんで俯けば、しんぺい神さんはじゃあ、と別の提案を私に持ちかけてきた。
「おれのこと、おくってって。ここまであるくんもきつかってん。」
舌ったらずにしんぺい神さんがそう言う。
確かに彼の足元はよろよろと頼りなくて、転ばずに部屋まで戻れるかは心配にもなった。
加えて大きな瓶を抱えている。中身はお酒なのだろう。落として割りでもすれば大変だ。
しんぺい神さんにはたくさんお世話になっている。そんな彼の頼みを、自分の気分だけで無下にするなんてできなかった。
沈黙を肯定ととったのか、しんぺい神さんが抱えていたものの内、比較的小さめの瓶を私に差し出す。
「これ、もって。あんま、おもないからへいきやろ。んで、ちょいかたかして。」
一つ瓶を抱えて、手招きするしんぺい神さんに歩み寄る。肩に手が回されて、さっきほどでは無いけれど体重がかかった。よろめかないように踏ん張れば、しんぺい神さんが笑った気がした。
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えある。 - zmさんかわです。天才がここにいるっ!主さん神ですね！応援してます〜 (2023年4月6日 10時) (
レス) @page16 id: 9c1c96d73e (このIDを非表示/違反報告)
（名前） - ゾムさんが可愛すぎるっぴ…キャラ崩壊してるっぴ。いつものかっけえゾムさんどこ言ったんだ……最高 (2020年4月13日 15時) (レス) id: ca685f05f7 (このIDを非表示/違反報告)
ちくわ(プロフ) - (´ω`)ｳﾄﾞﾝﾀﾍﾞﾀｲさん» コメントありがとうございます。お褒めの言葉、もったいないくらいです。とっても嬉しいです。自己満で書き始めたものですが、少しでも多くの人に楽しんでもらえれば幸いです。 (2020年2月26日 20時) (レス) id: bceee2f54e (このIDを非表示/違反報告)
ちくわ(プロフ) - neccoさん» コメントありがとうございます。アワ……めちゃめちゃ恐縮ですが嬉しいです。応援もありがとうございます、こつこつがんばっていきます。 (2020年2月26日 20時) (レス) id: bceee2f54e (このIDを非表示/違反報告)
(´ω`)ｳﾄﾞﾝﾀﾍﾞﾀｲ - ちくわさんの書く小説ほんと好きです！語彙力があるところ、表現の仕方がとても素敵です。リピーター続出ですね(*´-`) (2020年2月25日 22時) (レス) id: 43fae56533 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ちくわ | 作成日時：2019年9月29日 11時
