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第十九歩・・七味 ページ24

叫んだせいで、頭がくらくらする。
息も荒い。

相も変わらず一松は黙ったままだった。
恐くて情けなくて、顔なんか見れない。


顔を見たい。

声を聴きたい。

触って欲しい。

「大丈夫。」って言ってほしい。

頭を撫でてほしい。

その胸に飛び込みたい。

名前を呼んでほしい。

「帰ろう。」って言ってほしい。

笑いかけてほしい。

名前を呼びたい。

一松…一松。



一松、あぁ、どうしよう。
私、私…、どうしようもなく貴方が好きなの。

今、何もかもがどうでもいいくらいに、
貴方が恋しい。


恋しい……恋しいの。

思いが涙になって零れ落ちる。

あぁ、私って弱いなぁ。
泣き虫だなぁ。

どうしようもないのよ、私。



泣き始める私に、明らかに慌てだす一松。

「え、えっと…A?あの、」

一松の手が私に伸びる。



「触らないで。」

自分でも、びっくりするほど低い声が出た。

え?違う、違うわ…。

「やめて、喋らないで。」

こんなこと言いたいんじゃ…。

「声も聴きたくない。」

心と矛盾した言葉が溢れ出る。

熱い身体。冷たい雨。吹き付ける暴風。

「顔も見たくない。」

心から血が溢れ出る。

痛い、痛いの。

心臓に刃が突き刺さり、えぐられているような。

「暫く、会いたくない。」





雨音がうるさい。
自分の心音がよく聞こえる。

あぁ、やってしまった。

身体が一気に冷えていく。
どこか遠くで雷が鳴った。
水が滝のように流れる音がした。
傘が雨をはじく音がする。


一松の遠ざかっていく足音がする。


私の体は雨にさらされていない。
傘をおいて行ってくれたのか。

そっか、そっかあ。

一松は優しいもんなあ。

頬に熱く流れるものがある。

「ふッ……ッッ…。」


自分の不器用さにつくづく呆れる。

いや、思っていることと、真逆の事を口に出来るんだ。
逆に器用なのかも。

だとしても、

「嫌われたな、愛想つかされたかも。」

そんな、器用さならいらない。



一松?

私、私ね。


顔を見たかったの。

声を聴きたかったの。

触って欲しかったの。

「大丈夫。」って言ってほしかったの。

頭を撫でてほしかったの。

その胸に飛び込みたかったの。

名前を呼んでほかったの。

「帰ろう。」って言ってほかったの。

笑いかけてほかったの。



名前を呼びたいのよ。

「一松ッ…一松ぅ…。」

応えて…欲しいのよ。


一松



貴方に会いたいわ…。






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れっち(プロフ) - 梅ちゃんさん» 梅ちゃんさんありがとうございます!受験も終わり、そろそろ落ち着くので更新再開させようかと考えているので、待っていただけたら幸いです (2018年3月24日 18時) (レス) id: b979466d43 (このIDを非表示/違反報告)
梅ちゃん - れっちさん!お久しぶりです!相変わらずとっっっても素敵でした!そっか〜、受験、大変ですよね・・・。頑張って下さいね。応援しています! (2018年2月18日 0時) (レス) id: 22564277bd (このIDを非表示/違反報告)
れっち(プロフ) - 梅ちゃんさん» 返信遅くなってしまい、申し訳ありません。ありがとうございます!いつもは七味の方を絶賛する方が非常に多いのですが、2人と行っていただけて光栄です。素直に嬉しいですね! (2018年1月16日 18時) (レス) id: b979466d43 (このIDを非表示/違反報告)
七味(プロフ) - わわ!!お返事遅くなり申し訳ありません!そんなにお褒め頂けるとは作者冥利につきます!!ふふ、なんてね。一度は言ってみたかったんですよ。〜冥利に尽きるって。更新頑張ります! (2017年10月12日 13時) (レス) id: 36a26ffa25 (このIDを非表示/違反報告)
梅ちゃん - なんと言うか...はじめて見たとき衝撃的でした。こんな素敵な文を書く人が、いっきに二人も見つかるなんて!って。更新楽しみにしてますね! (2017年10月1日 1時) (レス) id: 22564277bd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:れっち & 七味 x他2人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kakasama1/  
作成日時:2016年9月19日 8時

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