Aぇ! 部 (ページ10)

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今日で3日目。2日間業務をこなしているうちに1つ思ったことがある。

福本先輩、ぜんっぜん休んでない。

1日目も1人休憩室に来るのが遅かったし、2日目はなんだかちょっと隈が出来てて、今日なんて時々ぼーっとしちゃってる。隈は2日目よりも多少濃い。

そして今日も休憩室に入ってくるのが遅かった。本人は平気そうに振舞ってるし、先輩方も気付いているようだか、福本先輩が弱音を吐かない疲れている態度を取らないなら...って感じに見える。男の子同士ってこういう感しなんだ。

かくいう私は多少のもやもやを抱えながらも夜の方も働き＿＿＿＿＿＿福本先輩は末澤さんの穴を埋めるかのように動き回っていた＿＿＿＿＿＿迎えた閉店時間。

「じゃ！みんな明日も頑張ろな、ばいばーい！」

店の前で福本先輩と別れる。5人で駅に向かって歩き出したわけだが...

「スマホ置いてきた...」

私戻りますね、と一言掛けて店の方へ駆け出す。

がらがら、と古風な引戸を引いて暖簾をくぐれば1人、残った食器を片付ける福本先輩。

「あれ、Aちゃんやん、忘れ物？」

「スマホを忘れて...」

「それはまずいなあ、はよ取り行き？」

と言ってくれたので早々に取りに行く。スマホは休憩室のテーブルの上に置いてあった。こんな分かりやすいのに置いていくとは...

スマホをポケットに突っ込んで休憩室から出ると、やっぱり1人働く福本先輩。

「スマホあったー？」

「ありました」

「そかそか、じゃあ気ぃつけて帰りな。俺まだ片付けあるから送れへんのやけど」

そういうと福本先輩は大量に残っている食器に目を向けた。2日間あの量を1人でやってたのかと思うと、なんでもっと早くに気付かなかったんだろうと本当に思う。

「...手伝ってから帰ります」

福本先輩も優しいから、ちょっとでも福本先輩に選択肢を与える言い方をすればきっと帰される。これ洗えばいいですよね？と聞けば、福本先輩はなんとも言えない表情をして、「...頼むわ」と首を縦に振ってくれた。

2人でやると単純計算でも今までの2分の1の時間で済む。食器の片付け、掃除、テーブルを直して、食材の確認、売上の確認。全て終わる頃にはもう9時半にもなっていた。

「ごめんなあ、やらせて」

でも助かったわ、と笑顔で言った福本先輩わ見て、ああ手伝って良かったなと思った。