第漆拾伍戦 優柔不断 ページ29
「貴方様が居なければ、この本丸は機能を成さない。貴方様がこの本丸の、いえ神域に住まう神を率いる将なのです。彼らにとっては貴方が主君なのです!お忘れなきよう」
「…………」
こんのすけは、長門が未だ迷っているのを見抜いていた。彼の中にあるジレンマが、優柔不断さを生み出しているのではないか。そしてその迷いが、命取りと成り得る事も。
恐らく死ぬ直前まで、吹っ切れることが出来ない事情を長門は抱えている。そして彼は懼れていた。再び自分が過ちを犯 すのではと。
「さーて、よく分かんないけど、アタシはもう少し飲んでくるね〜!」
「審神者殿も飲むかい?」
手入れを終え、完治した日本号と次郎太刀は懲りずに酒宴を続けるらしい。長谷部に止められているが、悪びれる様子も無く日本号は次郎太刀と廊下を闊歩している。
ブラック本丸の刀剣だが、長谷部や三日月と違い、彼らは妙にサッパリしているのが、逆にこんのすけや山姥切の疑問を増やしていく。
「長門?」
俯いたまま、微動だにしない主を横から山姥切が覗き込んだ。
口を強く引き結び、僅かに肩を震わせていた長門は、ぱっと踵を返すと、手入れ部屋から逃げるように出て行ってしまう。
「主!」
「長門!」
長谷部と山姥切が長門の後を追うと、広間で酒宴を再開しようとする日本号と次郎太刀と向かい合っていた。どうやら数少ない清潔な部屋で雑魚寝をする事になるのだが、その部屋割りの内容らしい。
「俺はそうだなぁ……おっと」
「小夜君?」
「……一緒じゃ、だめ?」
少し嬉しそうな表情で日本号に飛び付いて来たのは、小夜左文字だった。小夜も黒田家で過ごした時期があるらしく、表立っては見せないが、長谷部や日本号にも懐いている。
勿論長門は二つ返事で頷くと、小夜は日本号と同室と決まり、次郎太刀は一先ず、陸奥守の提言で獅子王、陸奥守、燭台切、鶴丸と同室となった。
◆◇◆
部屋割りを終えると、長門は審神者部屋に戻ると、部屋の灯りも点けず、障子を全て閉め切った。今は誰にも弱い姿を見られたくない。
弱いと大切なものを護れない。弱いと生き残れない。WW2の前夜、
その頃から少しずつ長門は強さに固執するようになっていった。教え子にも、生き残りたければ冷徹な判断力を持つように求めた。だが結局それは意味の無いもので、失ってから気付いた。今思えば、腐れ縁も十分強さに固執しているが。
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大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» ハワイの資料館ですか!私も1度は訪ねてみたいです。私の両祖父が軍人だったのと、生まれが広島なものでよく話を聞かされていました。死が正義という時代から、死を望む時代に変わった事については、皮肉なことに国の根幹は変わってないのです…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 大日戦さん» あの特攻した人の命を表す『ピイー』の音が、米軍の戦艦に突っ込んだ瞬間に『プツリ』と音が途絶える。その儚さにもう発狂しかけました。国のために命、家族すべて失うことが幸せな訳がないですよね?現代に生を得たから言えることですけど。また長文失礼しました。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 分かりやすい解説をわざわざありがとうございます!(敬礼)私もハワイの博物館とかにあった特攻の資料?とか、遺書のようなものを幼い頃見ていました。今でもその時感じた憂いのようなものが晴れません。国のために命を散らすことが正義なんて・・・ (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» “のたまう”は、大体『言う』のニュアンスで書いております。目線は第三者のつもりですが、時々刀剣男士になったり、こんのすけになったり、審神者になったりと突然切り替わることも多々あります…。ややこしくてすみません;; (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» あ、ありがとうございますぅぅ!退役軍人の手記や特攻隊員の遺書を拝見したことがあるんですが、やはり死への概念が今の人と全然違うのに驚かされましたね…。長門ニキは元大佐でも思考は現場寄りなので、デリケートな部分を書いていけたらと思っております…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:大日戦 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/member.php?id=16263880
作成日時:2016年12月18日 22時