第漆拾肆戦 中核 ページ28
そして長門の本気で怒った表情は、まさに『鬼瓦』だったと鶴丸が皮肉り、長谷部から小突かれるのも別の話。
◆◇◆
暫く状況を理解するのに時間を弄した後、長門は容赦なく二振りを手入れ部屋に叩き込んだ。
大量の資源を消費し、契約切の札と手伝い札を使う。手入れを終え、こんのすけを呼び、審神者部屋から見つかった前任の刀帳と政府の刀帳を使って調べると彼らの銘が判明した。
華やかな着物の刀剣男士は大太刀の次郎太刀。とても常人には振うことが出来ないであろう刀身故、神社に奉納され、長らく神事に携わった神刀である。
黒いツナギ風の刀剣男士は槍の日本号。黒田家に伝わる天下三名槍の一振りで、黒田節にもその名が伝わっている。
日本号は黒田家に仕えた事のある長谷部と縁のある刀剣男士だったようだ。
「貴方がたは私が最初手入れした際、刀帳に名前がありませんでしたよ？」
「恐らくこの二振りは本体に戻っていたのでしょう」
広間から長門の後を追ってきた山姥切が、足元から聞こえた声で下を見れば、こんのすけが鎮座している。理解出来ないのか、首を傾げる長門に順を追って説明する。
「重傷になった際、本体を護る為に刀剣男士の具現が解ける事があります。」
前任の術で具現が解けた場合、長門が後釜に座った時点で効果が切れる。どうやら長門が前任とその部下相手に派手に暴れ回った際、術式を破壊したらしい。前任の澱んだ霊力で覆われていた本丸は、長門の霊力で相殺浄化された。
負の怨嗟で閉じ込められていた二振りは、長門の霊力に呼応し顕現されたとこんのすけは言う。
数時間前に手入れした際は、長門の霊力が本丸の敷地内に十分に行き渡っておらず、結界内に閉じ込められていた二振りはようやく解放されたのだと。
「この刀帳は前任の物ですから、術が掛けられていたのかもしれません。長門様用の刀帳をお持ちしました。これなら間違う事も無いでしょう」
新しい刀帳を渡され、長門は複雑な表情を浮かべていた。彼らは別の審神者が呼んだ刀剣男士で、自分は後釜に過ぎない。山姥切は兎も角、彼らを自分の刀と云う事に抵抗感を持っていた。
「私は後釜ですよ……？」
「例えそうであったとしても、貴方はこの本丸の審神者なのです」
複雑な表情を浮かべている長門に、こんのすけは念を押す。彼を必要とする者が居る限り、本質は変わらない。長門が自ら手を差し伸べ、救った彼らが居る限り、紛れも無い審神者なのだから。
「貴方はこの本丸の中核です」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 355人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» ハワイの資料館ですか！私も1度は訪ねてみたいです。私の両祖父が軍人だったのと、生まれが広島なものでよく話を聞かされていました。死が正義という時代から、死を望む時代に変わった事については、皮肉なことに国の根幹は変わってないのです…。 (2018年2月11日 14時) (
レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 大日戦さん» あの特攻した人の命を表す『ピイー』の音が、米軍の戦艦に突っ込んだ瞬間に『プツリ』と音が途絶える。その儚さにもう発狂しかけました。国のために命、家族すべて失うことが幸せな訳がないですよね？現代に生を得たから言えることですけど。また長文失礼しました。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 分かりやすい解説をわざわざありがとうございます！(敬礼)私もハワイの博物館とかにあった特攻の資料？とか、遺書のようなものを幼い頃見ていました。今でもその時感じた憂いのようなものが晴れません。国のために命を散らすことが正義なんて･･･ (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» “のたまう”は、大体『言う』のニュアンスで書いております。目線は第三者のつもりですが、時々刀剣男士になったり、こんのすけになったり、審神者になったりと突然切り替わることも多々あります…。ややこしくてすみません；； (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» あ、ありがとうございますぅぅ！退役軍人の手記や特攻隊員の遺書を拝見したことがあるんですが、やはり死への概念が今の人と全然違うのに驚かされましたね…。長門ニキは元大佐でも思考は現場寄りなので、デリケートな部分を書いていけたらと思っております…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：大日戦 | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/member.php?id=16263880
作成日時：2016年12月18日 22時
