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第漆拾戦 精進落とし ページ24

精進料理や景気付けの夕食も、早くも消えかけている。
手入れを終えてからというもの、刀剣男士たちは無事に回復の兆しを見せている。精神的なケアも十分必要だが、今は体力を付けるのが先であろう。

光忠に御猪口に酒を注いで貰い、長門は一口に煽った。

「これ……上等なお酒ですよね?私が頂いて良いんですか?……今更ですけど。ハレの日に皆さんで呑めば良いものでは?」

「まあね。こっそり見つからないよう、隠してたんだ」

舌鼓をする長門に、光忠は愁いを帯びた笑みを見せた。元々特別な日の宴会用の神酒を大切に取って置いたらしい。かの老人との思い出を護る為か、はてまた前任への牽制か。どちらにしろ、この今が節目となった事に変わりない。

「これはね、あの人が僕たちの特別な日の為に買ってくれたんだ。だから僕たちにとって、今日が特別な日だよ」

「……なるほど。貴方を顕現した主殿に報いる為にも」

「よろしく頼むよ、長門君」

僅かに微笑んだ長門の御猪口に、再び光忠は神酒を注ぐ。彼は自身の御猪口にも酒を注ぐと、一口に煽った。
もう従うべき主は、ここに居る。この酒を口にするという事は、自分たちにけじめが付いたという事を意味している。
今の主が抱えるものは複雑で、全てを理解することは出来ないだろう。しかし長門は自分たちへ救いの手を差し伸べ、自分たちは主の手を取った。最早戻れぬ道なのだから。

◆◇◆

精進落としの酒宴が始まり、早数時間が経とうとしていた。酒が飲めない者は、用意されていたジュースやお茶を飲んでいる。
主に酒の飲める打刀や太刀は、各々で盛り上がっている。光忠と錫をしていた長門の隣に、鶴丸が腰を下ろしたのが事の発端だった。

「さて、無礼講だ。審神者殿の話を聞かせてくれるかい?」

「話と言われましても、話題と内容にもよりますね。私にも守秘義務がありますので」

「釣れないねぇ」

長門の御猪口に酒を注ぐと、鶴丸も一気に煽った。無礼講は多少構わないが、それでも年甲斐も無く羽目を外しすぎないで欲しい。
酔っぱらいの世話をするのは、骨が折れる。海軍時代には上官の宴会に付き合わされ、散々な目に遭った。

「鶴丸さん、飲み過ぎないで下さいね」

「きみが昔の話を教えてくれたらな。今朝言っていた海軍の話とか」

酒の酔いが回り、鶴丸の頬は赤みが差している。酒の酔いが回りやすく、顔に出やすい方らしい。彼は楽しげに口角を上げながら長門に絡んでいる。

第漆拾壱戦 無礼講→←第陸拾玖戦 夕餉



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大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» ハワイの資料館ですか!私も1度は訪ねてみたいです。私の両祖父が軍人だったのと、生まれが広島なものでよく話を聞かされていました。死が正義という時代から、死を望む時代に変わった事については、皮肉なことに国の根幹は変わってないのです…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 大日戦さん» あの特攻した人の命を表す『ピイー』の音が、米軍の戦艦に突っ込んだ瞬間に『プツリ』と音が途絶える。その儚さにもう発狂しかけました。国のために命、家族すべて失うことが幸せな訳がないですよね?現代に生を得たから言えることですけど。また長文失礼しました。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 分かりやすい解説をわざわざありがとうございます!(敬礼)私もハワイの博物館とかにあった特攻の資料?とか、遺書のようなものを幼い頃見ていました。今でもその時感じた憂いのようなものが晴れません。国のために命を散らすことが正義なんて・・・ (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» “のたまう”は、大体『言う』のニュアンスで書いております。目線は第三者のつもりですが、時々刀剣男士になったり、こんのすけになったり、審神者になったりと突然切り替わることも多々あります…。ややこしくてすみません;; (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» あ、ありがとうございますぅぅ!退役軍人の手記や特攻隊員の遺書を拝見したことがあるんですが、やはり死への概念が今の人と全然違うのに驚かされましたね…。長門ニキは元大佐でも思考は現場寄りなので、デリケートな部分を書いていけたらと思っております…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:大日戦 | 作者ホームページ:https://www.pixiv.net/member.php?id=16263880  
作成日時:2016年12月18日 22時

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