第陸拾肆戦 三日月宗近 ページ17
「鶴丸さんは黙ってて下さい」
「すいません」
自分を宥めようとする鶴丸すら黙らせると、長門は三日月の肩を掴んだ。
「良いですか三日月宗近さん。簡単に諦めるのは私が許しません。鶴丸さんも光忠さんも、自分の主の生き様に恥じぬ事を選びました。国を背負う天下五剣が自ら折れるだなんて……その名ごと返上なさい！」
士道に突き動かされた真っ直ぐな瞳を、三日月はハッキリと記憶に刻んだ。この覚悟の瞳を持った青年が、これから仲間を率いていくのかと思うと、尚更迷いが吹っ切れる。しかし彼は簡単には死なせてくれないだろう。
つくづく人間は矛盾した生き物だと思う。自分を慰み者にする審神者も居れば、長門の様に何を求めているのか分からずとも生きろと言う人間もいる。
「なぁ、三日月。俺と長門との約束、知りたいか？」
「約束……？」
自身の横に腰を下ろした鶴丸を打ちのけが顧みる。打ちのけに映る鶴丸の黄金の目は好奇に輝いていた。
「俺や長谷部、きみを具現化したあの人が植えた桜、あれをもう一度咲かせるまで、絶対に堕ちない事。それが俺たちの交わした“契約”であり“約束”だ」
「……桜か。そうか……また残っていたのか……」
あの老人との思い出は、三日月の中に強く残っている。今までの支えだったというのも、嘘ではない。もう一度、離れから出られたら話してみたい。思い出を語らいたい。その一心だった。それをいつ、折れたいと違えたのか。
この本丸が再び前を向いていく様を少し見てみたいと思った。あの長谷部と鶴丸ですら手懐け、生き残っている古参たちの心を開いたこの青年を見届けてみたい。
単なる好奇心と、彼の言葉に動かされただけのはずだった。だが、確かに三日月は彼へと手を伸ばした。
「……懐かしいな。前の主が今の俺を見たら、無様と笑われそうだ」
「その主殿に恥じないで下さい。思い出を汚さない為にも」
三日月の意志を汲み取り、長門は手を差し伸べる。そして天下五剣は、今一度、差し出された新たな審神者のその手を強く握り締めた。
「そうだな……。この天下五剣を叱咤する度胸、中々のものだ」
「すみません……っ。身勝手を……」
「気にせずとも良い、お主のそういう所に惹き付けられたのは俺も同じなのだから」
長門も応えるように天下五剣の手を優しく握るが、続けざまの三日月の一言で、先程の怒り任せな言動を思い出し、顔を真っ赤にする。聊か猪突猛進なのが、人を惹き付ける長所でもあり、短所でもある。
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大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» ハワイの資料館ですか！私も1度は訪ねてみたいです。私の両祖父が軍人だったのと、生まれが広島なものでよく話を聞かされていました。死が正義という時代から、死を望む時代に変わった事については、皮肉なことに国の根幹は変わってないのです…。 (2018年2月11日 14時) (
レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 大日戦さん» あの特攻した人の命を表す『ピイー』の音が、米軍の戦艦に突っ込んだ瞬間に『プツリ』と音が途絶える。その儚さにもう発狂しかけました。国のために命、家族すべて失うことが幸せな訳がないですよね？現代に生を得たから言えることですけど。また長文失礼しました。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
ふてんにぶおんぷ(プロフ) - 分かりやすい解説をわざわざありがとうございます！(敬礼)私もハワイの博物館とかにあった特攻の資料？とか、遺書のようなものを幼い頃見ていました。今でもその時感じた憂いのようなものが晴れません。国のために命を散らすことが正義なんて･･･ (2018年2月11日 14時) (レス) id: 7ca422baae (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» “のたまう”は、大体『言う』のニュアンスで書いております。目線は第三者のつもりですが、時々刀剣男士になったり、こんのすけになったり、審神者になったりと突然切り替わることも多々あります…。ややこしくてすみません；； (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
大日戦(プロフ) - ふてんにぶおんぷさん» あ、ありがとうございますぅぅ！退役軍人の手記や特攻隊員の遺書を拝見したことがあるんですが、やはり死への概念が今の人と全然違うのに驚かされましたね…。長門ニキは元大佐でも思考は現場寄りなので、デリケートな部分を書いていけたらと思っております…。 (2018年2月11日 14時) (レス) id: e07552d661 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：大日戦 | 作者ホームページ：https://www.pixiv.net/member.php?id=16263880
作成日時：2016年12月18日 22時
