Chain Ⅲ【幸村精市】 (ページ30)

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＊if. ページ30

「精市くん！」

少年が一瞬反らしかけた視線を、その声が呼び戻した。

「＿＿＿＿私、アメリカにテニス留学することにしたよ！」

それは、強い衝撃。

少年は大きく目を見開き、少女を見つめた。少女は相変わらず、太陽のような笑顔で笑う。

「……本当に？」
「うん！もう迷いはない、なーんてね！」

少女はいつもの少年の真似をし、ピースをした。

「……そっか、」

それが、どこか寂しいような、嬉しいような。今まで彼女を異性として愛する反面、親のような目線で見てきたところがある。いつも背中を追っかけてきた彼女が、ついに俺の背中を追い越そうとしている。なかなか、じーんとくるものが少年にはあった。

「……寂しい？」

ほんとはちょっぴり寂しいけれど。今の俺が言うべき言葉は1つだ。少年はそう思いながらゆっくり首を横に振り、彼女を強く見つめる。

「強くなって帰ってきてね、＿＿俺も強くなって待ってるから」

あのときの彼女と同じ言葉を。彼女も気づいたようで、目を見開いたあと、満面の笑みを見せた。

「……うん！」

それから、あのときのように小指を交わらせて約束をする。子供みたいに、歌を歌いながら。

＿＿そうして数週間後、今度は少女が鳥籠から羽ばたいていった。自由に羽を羽ばたかせて。

少年は飛行機の描いた線を目でなぞった。それから、その青に目を背けて、また別の方向へと歩きだした。

またいつか交わる、その日まで