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電話を切ってどれくらい経ったんだろう。
30分くらい経ったのかな。
携帯を片手に息を切らした玉森先生がやって来た。
「走ってきたの?」
「当たり前じゃん。(人1)が待ってる間になんかあったらどうすんの」
あ〜疲れた〜ってその場にしゃがみ込んだ。
「ここの公園Googleマップで検索しても出てこないし。ほんとにスナギモって名前なの?」
「スナギモだよ。ほら、あそこ見て」
わたしが指さす方をじっと見つめる先生。
「・・・うわ、マジだ。スナギモじゃん」
「だから言ったじゃん、スナギモって」
「え、なんでそんな名前つけたんだろ。ここの公園作った人多分相当な変人だよ」
なんて真顔で言うもんだからつい吹き出してしまった。
「なに笑ってんだよ。あ!てか、なに勝手なことしてんだよ!」
忘れてたと言わんばかりの顔でわたしを叱り始めた。
今の今までは穏やかだった先生の表情も、もう鬼のよう。
なんだよ、今ちょっと忘れてたくせに。
「・・・ごめんなさい、」
「だめっつってんのに勝手に電車降りるし、既読無視はするし、電話もすぐには出ないし、挙句の果てに迎えに来るなら居場所教えないって言うし。
ほんとにお前は・・・、」
その先に続く言葉をわたしは知ってる。
『面倒くさい 』
そうでしょ?
だけど先生は口にはしない。
だからわたしが代わりに言ってあげるの。
「先生今、わたしのことすっごく面倒くさいって思ってるでしょ」
先生はこっちを見てなにも言わない。
だけどわたしには分かるよ。先生ってほんとに分かりやすいんだもん。
「・・・(人1)には嘘をついても信じようとはしないし、変に勘ぐろうとするからほんとのこと言うけど、」
ゴクッと唾を飲み込む。
「正直、・・・めちゃめちゃ面倒くさい」
ほらね。当たったでしょ?
なんて言いながらちょっとグサッと心にきた。
「でも、全然嫌じゃない」
「えっ、?」
「嫌な面倒くささじゃない」
「どういうこと?」
先生の言ってる意味がイマイチよく分からないんだけど。
「他の生徒だったらワンチャン放置しちゃうかもしれないくらい面倒くさいことも(人1)のことってなると、面倒くさいけどやろうって気になる」
「・・・それは、どうして?」
「さあ?どうしてだろうね(笑)」
・・・大人はほんとにずるい。
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作者名:にこまる | 作成日時:2018年7月16日 1時