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「そんなお金ほんとは貰いたくもなかったけど、それを貰わないとわたしは学校にもいけないから。仕方なく頂戴したの」



「(人1)ってそんな小さい頃からしっかりしてたんだ、」



「大学に進学する分と成人式に必要な分は残ってる。進学するかは分かんないけどね」



「もしかしてお父さんはそれで働かなくなったの?」



「ううん、違う。・・・うちの父親はどんなにわたしを殴ってもどんなに荒れてても、あのお金に手を出すことは一切しなかった」






電車のガタンという衝撃で膝の上に置いていた鞄がドサッと下に落ちた。



それを元に戻しながらわたしは話す。






「父親は相当母親を恨んでたからさ、そんな人の親から貰ったお金なんて触りたくもないって思ってたのかもしれないし、わたしの事を考えて使わなかったのかもしれない。・・・でもまあ後者はないかな(笑)」








ーーープルルルルルル






聞こえる携帯のなる音。




わたしはバイブにしているから先生の携帯ってことになる。






面倒くさそうに背広の内ポケットから携帯を取り出す。


画面を見た瞬間少し曇った先生の顔。






今回は見るのはやめよう。覗けないこともないけど、曇った先生の顔を見るとやめようという気になった。




そのつもりだったのに、先生が動くから。

見えちゃったじゃん。



「綾」の文字。






その瞬間、なんだか全てが嫌になった。




また「綾」さんからの電話。

先生は大したことじゃないってずっと言ってたけど
そうだったとしたらこんなに連絡来ないでしょ?





「電話、出ていいよ。今この車両誰もいないしこの先乗ってくることもないだろうから」



「出ないよ。(人1)いるし」







なによ。わたしのせいにしないでよ。

そのわたしがいいって言ってるんだから電話出ればいいのに。



そっか。先生は仕事とプライベート分けるタイプだもんね。
わたしは特別とか言いながら肝心なことは全部濁すんだもんね。

わたしがいるところで彼女と電話しないよね。


いいよ、わたし降りてあげるから。







「わたしここで降りるから」



「は?最寄りあとふたつ先じゃん」



「ちょっとのんびり歩きたい気分になった」



「何言ってんの?俺がさっき言ったこと覚えてる?ひとりで帰すわけねーだろ」





ちょっとムッとする玉森先生。




「でも決めたから。ここで降りる」







タイミングよく電車がとまった。






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作者名:にこまる | 作成日時:2018年7月16日 1時

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