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電車に揺られながら段々と減っていく人達をボーッと眺めていた。
この車両に人がわたし達しかいなくなった時、先生が隣に座ってきた。
「ずっと気になってたんだけどさ、」
「なに?」
「(人1)さっき、貯金がどうとかって話してたじゃん」
「ああ、」
「お父さんって・・・その、」
「違うよ」
「えっ、」
お父さんは働かないのにどうして貯金があるのか気になるんだよね?
それはお父さんのお金なの?って聞きたいんだよね?
先生って自分が気になったことって結構聞いてくるよね。
まあ別にいいし、先生に教えるのは不思議と嫌じゃない。
「貯金のお金はお父さんのじゃない」
「え、それってどういう・・・」
「うーん、ちょっと複雑だけど、あれは母方の祖父母のお金」
「あの逃げたっていう?」
「そう。わたしが小学生に上がる前かな?お家に来たんだ。祖父母」
電車はトンネルの中に入り、窓の外が人工的な暗さに変わった。
「母親が逃げたこと祖父母は知らなかったんだって。いくら言っても会わせてくれないことを不審がって問いただしたら6年前にわたしを手放したことを告白した」
「6年って、よくお前の母親も必死に隠したよな」
「ほんとだよね。海外暮らしだからさ、あの人たち。いいように言い訳できたみたい」
「え、(人1)のおじいちゃんとおばあちゃん海外に住んでるの?」
「そうだよ。なんか祖父が大手企業の代表取締役みたいなのらしくて。すっごい大金持ってわたし達に会いに来たんだ」
「それは謝りに・・・とか?」
「そうだよ。あざだらけのわたしにビックリしてた。
わたしはてっきり助けに来てくれたと思ったから、これで殴られなくて済むって嬉しかったのに、お金が入った通帳だけ置いてそそくさと帰って行った」
10分も滞在してなかった気がする。
『 あの子がほんとに馬鹿なことを・・・』
って謝ってたけど、心はこもってないなって6歳ながらに感じてた。
「母親が逃げたことをお金で解決しようとしてるのが嫌だって、父親は言ってた。わたしもそれは思う。
でも、わたしがもうちょっとマシだったら何とかしようとはしてくれてたんじゃないかな?」
「マシ?」
「大手企業の代表取締役の孫があざだらけって流石にまずいでしょ?ビジネスするのにわたしは隠しておきたい存在だから」
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作者名:にこまる | 作成日時:2018年7月16日 1時