74 Oside ページ24
「待ってようか？」
そう言ってくれた翔くんに甘えて、連絡するまで待っててもらうことにして、おいらは車から飛び出しマンションに飛び込んだ。
路駐なんかしたらマズイってわかってたけど、今はそんなことよりAのこと。
「ごめん、翔くん。」
誰かに見つかる前に３階まで駆け上がって、Aの家のインターホンを押した。
ドアの前でもう一度電話をかけてみる。
応答のないインターホンを２回、３回と連打してドアノブを動かした。
「！」
鍵がかかっていない。
なりふり構わずおいらはドアを開けて中へ入った。
「A？
入るよ。」
静かな家ん中で微かに音が聴こえる。
何度も入ったリビングまで行って、音がテーブルに置かれた荷物の中の遥の携帯の着メロだって知った。
おいらのソロ曲のメロ。
おいらがかけていた電話を切ると、メロも止まった。
Aの部屋のドアが開いてたからそっと中を覗くと、壁とベットの間に俯いてるAの頭が見えた。
「A・・・ごめん・・・。」
背中を向けてたから、その背中に向かって声をかける。
「・・・。」
返事も動きもない。
「A・・・。」
少しずつ近づいて肩に手を置くと、Aの身体がビクッとなった。
「ごめん。
絵に夢中になっちゃって・・・。」
そのまま後ろからそっと抱きしめる。
「呼んでくれたらいいのに。」
「！」
突然Aがおいらの腕をほどいて
「呼んだのよ？
智くんって・・・。
だけどひとりの世界に入り込んで返事してくれなかったじゃない！」
泣いてたのがわかる鼻声。
「帰る時も、私ちゃんと・・・帰るねって智くんの後ろ姿に言ったよ！」
怒ってるから顔を見せてくれない。
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作者名：Fg | 作成日時：2014年7月10日 10時
