yellow ページ41
『…ひーくん？』
「無理」
『いや、無理って、何が』
お友達とカフェに行くからお土産買ってくるねって言ったら
さっきまでニコニコしてたくせに。
目の前ではブスっと拗ねた顔をして
腕を組んで通せんぼする大きな彼。
下ろされた前髪、少しダボッとしたシャツ。
いつものオラオラ！な感じも好きだけど
このふわふわした感じも好き。…ってそうじゃなくて。
『ねえ、待ち合わせに間に合わないよ』
「……やだ」
『え？』
「それ、嫌だ」
指さしたのは、私の肩。
オフィショルのニットで、買ったばかりの初出し。
ウキウキで着替えて、それを見た照くんが
気付けば通せんぼを始めて。
『もしかして似合ってない？』
「めっちゃ可愛いよ」
『ええ？じゃあいいじゃん！』
「だからダメなの」
一向にダメしか言わないから、
試しにその胸をポカポカ叩いてみてもビクともしない。
『…筋肉男め』
「それは褒め言葉です」
『もう！なんでダメなの！』
何度聞いても拗ねた顔するだけで、埒が明かない。
「…外には、他にも男がいんの」
『…うん？』
「だから」
私の腕をグッと掴んで、腰を引き寄せた。
不意に抱きしめられたからよろけて、
その腕の中に閉じ込められる。
「こういうこと、する奴もいるかもよ」
ツー…と肩をその指がなぞる。
思わず身体を跳ねさせると、意地悪そうに笑った。
「俺以外に、そんな事されてもいいの？」
『……や、だ』
「じゃあ、着替えて」
……ああ、そういうことだったんだ。
そのなぞる手が腰に回って、次は背中を撫でた。
思わず声を漏らすと、その目が急に色っぽくなって。
「…やっぱやめない？行くの」
『ダメ、もう30分後だもん』
「俺が、我慢できないんだけど」
ちゅ、ちゅと音を立てて肩にキスを落とす。
普段触れられる事があまりないから、
やけに強く感覚が伝わって、焦れったくて。
『……っ、ひかるくん』
「あは、かわいー顔」
思わず顔を上げると、
待ってましたと言わんばかりに噛み付かれる。
『んー……っ』
息が苦しくなってやっと離してくれたけど、頭がぼーっとして。
「んで、お返事は？」
『へん、じ？』
「�狢召良�に着替えて�瓠弔如�どうするの？」
『……着替える、から』
「ん、いーこ」
結局、今日も照くんの思うツボ。
(どっちにしろ着替えなきゃいけなかったけどね)
(え？)
(肩。キスマーク、見せびらかしたくないでしょ？)
(…ひーくんのバカ)
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作者名：蒼 | 作成日時：2024年2月25日 20時
