出会い 村上side ページ9
皆さんとのジャンケンに負けてしまい、会場の電気を消すという罰ゲームを課せられてしまった。
「はぁ、早く消そ。…寒っ」
暖房の切れた会場は刻一刻と寒くなっており、俺は早足でブレーカーの元へ向かうと周りを確認することも無く電気を消した。
「うわっっ!!!」
「えっ!?」
電気のブレーカーを落とした瞬間に女性の驚いた様な声が聞こえた。反射的に声を上げ、すぐに電気を付け直す。辺りを見回してみると、隅に女性が座っていた。やってしまった、と思い、少し駆け足で彼女に近づいた。
「す、すみません。人がいるとは思わなかったので…」
彼女は俺が近づくとほんの、ほんの一瞬だけ顔が強ばった。確かに自分の体格のデカさで驚かれる時もあるが、その時の彼女の表情は驚きというよりも…恐怖？
「い、いえ大丈夫です。会場に誰も居なかったことに気づかなかった私が悪いんですから。」
彼女は申し訳なさそうな恥ずかしそうな顔をして椅子から立ち上がった。
「俺、村上宗隆っていいます。急に電気消しちゃってすみませんでした…」
お互いに立ったままだと凄く気まずいから先に自己紹介する。ついでに頭も下げる。
「あ、AAといいます。だ、大丈夫ですから頭上げてください。」
彼女はAAさんという名前らしい。いい名前だなぁ。Aさん可愛いし。いや、何考えてんだ俺。Aさんにそこまで言われたら頭を上げざるを得ない。やばい今めっちゃだらしない顔してる自覚がある。そんな事より、もう親睦会は終わっている。なのに何故彼女はここにいる？
「あの、なんでAさんはまだこの会場に？他の皆さんは外での写真撮影が終わってほぼ全員帰りましたよ？」
俺がそう言うと、彼女は目を見開いて、
「え、マジですか…」
「あ〜、すみません教えて頂いて。じゃあ私はこれで。」
と、俺の横を通り過ぎようとした。何となく帰らせたくなくて、
「あ、あの！言いにくいんですけどどうやって帰る予定ですか？この店駅からも遠いしタクシーも今日は予約がいっぱいで拾えないらしいんですけど…」
と早口で言ってしまった。彼女は少し青ざめたような顔で頭を抱えしゃがみ込んだ。その様子を見て、何かしたいと思った。が何をすれば…？
「あ、ちょっと待ってて下さい。」
俺は良い案を思いつき、スマホを取り出してある人に電話を掛けた。
「もしもし？ーーー」
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作者名：吹雪鬼 | 作成日時：2023年5月3日 14時
