人間のクズ。

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私はね、自分がとても恐ろしいのです。




私は塾に通っていました。
昔、母と私、塾長の三人で個人面談のようなことをしたのをはっきり覚えています。



私は普通の子でした。普通は目立たなくてもまぁまぁよく見られるのです。



まぁ、努力してるだのなんだの褒められるのですがね、してませんよ。

してないんです。


それでも私はしてみせるのです。少し困ったように眉を下げ、恥ずかしそうにしてみせるのです。




そうすると大人二人は笑うのです。
そんな大人達を私は酷く軽蔑しました。






塾長は言いました。



【電子辞書などを使うのもいいかもしれませんね】





母は私にそれを与えておりました。
ですが私はクズです。努力をしなかった為、そんなものは使いませんでした。



母が言いました。



【買ったんですがね、使っていないんですよ】



私は、こうしたのです。


「だって、だってあれ意味わからないんだもんっ！まず…パスワードの設定からして分からない…」



落ち込んだように恥ずかしがるように言いました。声のトーンを上げ下げして言いました。



そうするとまた、大人達は笑うのです。








塾長は言いました。

【検定も取っておくといいですね。頑張りましょう】



私は次に、少し驚いた顔をします。


その後に、下から母と塾長を交互に見て、口を少し開けて震えました。挙動不審をしました。





「ぇ、ぇ、…ぇっ」


小さく間の抜けた声を漏らして挙動不審をします。キョロキョロします。




また母と塾長は笑いました。






私は別に電子辞書の使い方がわからなかったわけでも、そこまで重度の機械音痴ではありません。

それでも、そのように親に、友人に、知り合いに、先生にそれを私の欠点として刷り込みをしてきました。




挙動不審もわざと大げさにやりました。
普段しっかりしていると見られている私の変わった行動に驚きながら笑うのです。

「意外」と言うのです。









私はその後下を向き、髪に顔を隠しながらつまらなさそうな顔をしました。

また大人を軽蔑しました。



自分の子供にまで刷り込みをさせられ、特徴や欠点を計算されたものを印象に植え付けられる母。


生徒に手玉に取られ、生徒の性格を勝手に判断し、理解した気持ちになっている。そしてまた、偽装の性格と特徴を植え付けられた先生達。






ふっ。私はそう笑いました。
信じられない、ほら見ろ。


私はとことんクズでした。


_____人間のクズ。_____

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