自称兄に攫われた【文豪ストレイドッグス】【中原中也】

幸福 ページ22

もうすっかり夕方だ。

人の多い道を小走りに待ち合わせ場所に向かう。






待ち合わせたその場所に中也さんがいた。
どうしたって目立つ。
やはり小さいと思ったのは秘密だ。




「中也さん！」




後ろから声をかけると、少し呆れたような顔をした中也さんが振り返る。仕方ない。



「遅せェよ。……んで、いいもんあったかァ？」


たくさんあった。やはり可愛い服なんかも多かった。やはり来たのは正解だ。








「…まぁ、ありましたよ。可愛いアクセサリーなんかもありましたしね」


「買ったのか？」


「いえ、あまり無駄遣いも…と思いまして」


正直そこまで必要なものでもない。無理に買う必要はないだろう。







「へェー…どこの店だ？」



「あ、向こうの…」


指を指していう。





「んじゃ、行くぞ」


急に手を引かれてバランスを崩す。
強引すぎだ。



「え、ちょ、っと…！」




そのまま中也さんは私の手を引きながら私が指差した店へ向かった。

途中、周りの人にも見られていて、物凄く恥ずかしかった。





「どうしたんですか？！」


「んで、どれだァ？」



相変わらず無視のようだ。
どうせ聞いてくれないのだと思い、素直に話すことにした。




「…これです。この、月の形のネックレス」


「いいじゃねェか。買ってやるよ」




「え、悪ですよ！別にアクセなんてそこまで必要なものでもありませんし…！」



太宰さんに奢られたばかりなのだ。1日に二度もは流石に申し訳ない。



「うるせェ。少しくらいカッコつけさせろ。…なァ？」




こちらも引いてはくれなさそうだ。

そして何気に微笑ましいと言った顔で見て来る店員よ、やめてくれと内心赤面だ。








「…もう！分かりましたよ！…今度私からも何かお返ししますね」



「あ？別にいらねェよ」




…



…



…


結局買ってもらった。

せっかくなのでその場でつけてみる。



「どうです？似合いますかね？」


「…おう。似合ってる」



「ありがとうございます…大事にしますね！」






こういう形では中也さんからの初めての贈り物。









__________少し変わった出会いの二人、けれどこの兄妹にとってはこの変わった出会いと“日常”がとても幸せであった



、




、




、





「つかテメェ時間忘れるタイプかァ？」





「今日太宰さんって人に助けていただいたんですよ！」









「はぁぁぁああああああ？！」

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