自称兄に攫われた【文豪ストレイドッグス】【中原中也】

準備 ページ14

朝、彼女の目を覚ましたのは差し込む光と小鳥のさえずりだった






訳では当然なく、



、



、



「起きろぉぉぉおおお」


「ぎゃぁぁぁぁあ？！」




中原中也の声によって起こされた。


「おっ、起きたか」

「おはようございます…？」


「はよ。つか早く準備しろッ」



状況がいまいちわからなかったのも無理はない。急に起こされ、考えることを放棄している頭に急に準備しろと言われても何をしていいか分からない。

おまけに何のための準備だと言うんだろうかと思っていた。




「なんの準備ですか…？」


寝起きのため間の抜けた返事だ。




「はァ？！いつまで寝ぼけてんだよ？行くんだろ、本部に」



「…」

「…」





数秒間の沈黙。それを破ったのは私だった。







「何でもっと早く起こしてくれないんですかぁぁぁぁあ？！じゅ、準備！準備って何？！何すればいいですか？！」



「とりあえず着替えろ！！」




、




、




、




______慌ただしい朝を迎え、引きこもり、ついにマフィアの本部へ行くこととなった









「…あ"ー、間に合ったな」


「せ、セーフ…」



何がセーフだよ、なんて顔をされたが目をそらす。


その後は中也さんについていった。殆ど初めての場所、おまけにポートマフィアの本部だ。挙動不審になってしまうのは仕方なかった。


ある程度は堂々としていた方がいいことは分かるが、難しかった。









「中也、その娘は誰かえ？」


「！姐さん」


誰だろうか、綺麗な人。
女の私でも惚れてしまいそうだった。

中也さんの知り合いらしい。



「姐さん、こいつは…」


「はて、もしや中也の妹か？」


「…はい」



あぁ、私に気を使っているのか、そう思った。きっと中也さんは私に悪いと思ってはっきり妹だと言えなかったのだ。

ここまでくるとさすがに私は中也さんの妹だと分かる。それでもまだ心が追いつけていなかった。



「そなた、名はなんじゃ？」


「Aです」



思ったよりすらっと口から出てきた。よろしくお願いしますと微笑んで頭を下げると、この人も少し嬉しそうな顔をしていた。





「私は尾崎紅葉じゃ。紅葉でも姐さんでも好きに呼ぶといい」






そう言って笑う姐さんにつられて私もまた笑みがこぼれた。






マフィアにもいい人達もたくさんいるのだろう。





少しまた、安心出来た。



きっと、ここはそこまで悪いところではない、そう感じた。

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