僕という方法1 ページ10
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「色欲の主人、傲慢の主人、強欲の主人……。直接話すのは初めてかな。初めまして」
妖艶な雰囲気と、不気味な違和感。視界に入れただけでわかる。これは絶対に立ち向かってはならないものだ。それほどまでにこの目の前にいる奴は、絶対的な力を有していた
「……御園は、会ったことなかったの……」
「……下位やリリイから情報としては聞いていたが、直接会うのは初めてだ」
「私は一度……、一人のときに会ったことがあります。そのときはある質問を投げ掛けられただけでしたが……」
普段穏やかなリリイが、難しい表情をして言う。だが決して視線は椿から離さずに
質問……。あのときの椿の声が、頭の中で甦ってきた。兄弟全員僕を知らなかったと、じゃあ、僕は誰だ?そう笑う椿。何だろうなあ、今思い出すと少し違和感が残る。ああ、何だ。何だろ。どうしても、私には理解できない
「……ヒューが、どうなったのか知ってんのか?」
もやもやとした私の思考を遮ったのは鉄の声だった。待って、と声をあげるが、鉄は私達の制止の声など聞かずに椿に問いかける。そして、椿はその表情を嘲るように歪め、可笑しそうに、楽しむように。窓の外の、大量の灰塵を指していった
「見てわからなかった?」
鉄はいい奴だ。何もかも引っくるめて、自分の大切なものを必死になって守れる奴だ。外見も落ち着いた雰囲気も、私よりも遥かに大人っぽい。だけど。14の子供にそれを聞かせるのは酷じゃないか
滅多に表情を崩さない鉄が、キレた暴虐な子供のような濃密な殺気を椿に向けた。駄目だ、それだけは駄目だ、鉄。くいっ、と鉄の服を掴んで、制止を促すように引っ張る
「鉄、駄目だ。一回落ち着け」
「姉貴……っ、でも__」
「救えるものも救えなくなる、今は落ち着け」
私だって、これが最善かはわからない。そんな不安が表情にも出てたのだろう。鉄は私の表情を見るなり、少し困ったようにして、「悪い……」と謝った
鉄が一旦落ち着いたのを確認すると、不安と焦りに溜まった瞳を精一杯鋭くして、椿を睨む。そして閉ざしていた口をゆっくりと開いた
「……サーヴァンプと主人の信頼関係が正常なら、それは壊せないんじゃないの」
「あはっ……、信じられないなら、今もうひとつ……目の前で壊して見せようか?」
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桜彩 - 続きが楽しみです!頑張ってください! (2020年9月4日 8時) (レス) id: 193d98d6bf (このIDを非表示/違反報告)
F(プロフ) - とても大好きな作品で、新刊が発売される度にここに来てしまいます。これからも待ち続けます。 (2020年4月29日 16時) (レス) id: 22d6502484 (このIDを非表示/違反報告)
かきぴー - 打ち切りになってしまうのですか└(┐゙’ω゙’ω゙`┘)┌ 貴方様の作品が好きなので、私はいつまでも待っていますが大分たっているので生存を別アカで確認に来ました!! (2018年9月24日 0時) (レス) id: ab44efb571 (このIDを非表示/違反報告)
ミナ(プロフ) - ずっと待っています。今回の発売でも小説は進められませんでしょうか?打ち切りであるなら一言下さるとありがたいです。続き、楽しみに待っております。 (2018年3月28日 4時) (レス) id: c82e30fe23 (このIDを非表示/違反報告)
ぶるべりほいっぷ(プロフ) - こんばんは。ずっと作者様の作品読ませていただいております...!更新待ってますので頑張ってください> < (2018年2月26日 21時) (レス) id: 18f2bb9f8b (このIDを非表示/違反報告)
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