今日のディナーはチョコレート2

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「シートベルトして下さい」

「車持ってたのね」

「そうっすね。意外にも持ってるんすよ」




本当に意外だ。


岸優太ってケチだから

大きな買い物はしないイメージ。



いや逆に？ケチだからこそ大きな買い物ができるのか？



「Aさん免許持ってますか？」

「持ってない。欲しいなって思ってた時期もあったけど健ちゃんに出会ってからは岩橋がいたから」

「そういえば岩橋さんって何者なんすか」

「運転手」

「そうっすよね。運転手。うん、そうじゃなくて、なんていうんすかね？」



言葉を濁す岸優太にイライラしながらも、聞きたいことはなんとなく分かった。


正直わたしも岩橋が何者なのかはよく知らない。

だけど



「わたしは岩橋好きだよ」

「え？いきなりなんすか！」

「岩橋はわたしのこと好きじゃないと思うけど」



赤信号で車が止まって
岸優太はペットボトルに手を伸ばした。

中身はオレンジジュース。



「俺は岩橋さん、Aさんのこと相当好きに見えますけどね」

「どうしてそう思うの？」

「なんとなく？男の勘っす」


一口飲んで、飲む？と言わんばかりにそれをわたしに渡す。

本当はお茶が飲みたい気分だったけど、受け取って口を付けた。



「間接キスっすね」

「中学生か」

「たかが間接キスかもしんないっすけど俺はAさんが他の男としてたら嫌っすよ」

「廉とか？」

「すぐその名前出すのやめて下さいよ」



赤信号が青に変わって、車が動き出した。


全く好きでもない人にこんなこと言われたら気持ち悪くて仕方ないんだろうな。

冗談で返せるのは、少なくともわたしが岸優太に気がある証拠だ。



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