差し出す ページ6
俺は蝶屋敷を後にした。
綺麗な庭だった。
たくさんの蝶が戯れている。
あの頃と変わらない。
そういえば、しのぶには継子が居ると聞いた。
今度機会があれば見てみたいな。
どんな子か。
女の子と聞いたし、相当優秀な子なんだろう。
ドンッ！
痛っ……。
俺は頭を上げた。
そこには小柄な男の子が倒れてしまっていた。
『すみません、
お怪我は大丈夫ですか？』
俺は彼に手を貸したが
その手は振り払われていた。
「逃げてください、俺は放っといて。
貴方までここで死ぬのは嫌です！ 」
男の子は泣きそうな目でそう訴えてきた。
そういえば
もうこの辺りは日が暮れてしまっているな。
『どうしました、
もしかして怪物でも？』
俺はそう問うと
男の子は頷いてきた。
よく見れば足にも大きな怪我を負っている。
俺は刀を抜いた。
きっとそれは俺が思っている怪物だ。
『麗の呼吸 参ノ型 荘厳華麗』
俺はその一瞬で彼を追って来た鬼を斬った。
こんな奴に呼吸を使うとは。
でも今回は確実に斬らないと更に
男の子に怪我をさせられたら困る。
戯け。
俺はそう呟いた頃には何一つ残らず消えていた。
『駄目ですよ、
むやみに日が出てない時に外を出ては。
その怪我、
今軽く応急処置をするので貸してください。』
彼から見たら俺は人殺しだ。
拒絶されるのは予想出来ていた為、
俺は出来るだけ直ぐ去りたかった。
でもこの怪我をしている彼を
放っとく訳にもいかないだろう。
俺は急いで止血した。
そして自分の屋敷に向かった。
普通に暮らしていれば
こんな怪我、滅多にしない。
万が一、医者に連れて行って
疑われたら溜まったものではない。
暫くこの傷が良くなるまで
俺が治療しよう。
しのぶに頼もうかとも思ったが
俺の兄は医者だ。
俺だって少しは分かる。
ずっと隣で見ていたのだから。
何より彼女は他で忙しいだろう。
布団の上で男の子を寝かせた。
今日は何処で寝ようか。
失敗したな、来客用の準備しておけば良かった。
「あの、ありがとうございます。
貴方の名は何というのですか？
俺の命を助けてくださった貴方の名は。」
俺は正直、驚いた。
怖くはないのだろうか。
目の前で化け物とはいえ生き物を殺したんだ。
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作者名：もち | 作成日時：2024年3月9日 0時
