花びらみっつ ページ3
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松野カラ松が心の内の違和感に気がついたのは、中学生もあと半年で終わりを迎える夏の暑い日だった。
夏休みももう2週間もなくて、カラ松は溜まった宿題におわれていた。ジジジ、ミーンミーン、とやかましく騒ぐセミの声をBGMに、エアコンもなくて、ボロの扇風機1台がかろうじてがたがたと動いていた。
「……どうしたの、兄さん。僕の顔、なんかついてる?」
「んぇ!?い、やぁ……なんでもないよ……!」
その日は弟の一松と一緒にあーでもないこーでもないと言い合いながら宿題を片付けていて。
……なんとなく、ふと一松を見た時に、ちょうど偶然、彼のうなじからツゥ、と汗が一筋流れるのを見て、
────なんだか、凄く色っぽい。
と、そう思ったのが始まりで。
それから、一松を眺めるのが多くなって、いつの間にか目が話せなくなって、ふとした仕草に胸の奥がギュゥーッと締め付けられる事が増えてきて。
それが、恋なんだと。
俺は、いつの間にか一松のことが好きになってしまったんだと。
カラ松は事の重大さに気がついてしまったのだった。
男同士。兄弟。ましてや6つ子。同じ顔が6つ。
誰から見ても異常なことだと、いくら馬鹿だと、からっぽだと言われたカラ松でも分かったから。
だから、カラ松はこの気持ちを押し殺そうとしたのだ。
だって、抱いちゃいけない感情だから。
こんな気持ちは、間違っているから。
────絶対に、悟られてはいけない。
それからは気持ちを悟られないように、気づかれないように、隠さなくてはと周りを警戒して気を遣うことが、増えた。
警戒して、
押し殺して、
我慢して、
……それで、本人も気付かぬうちに限界がきてしまったのだ。
真っ赤な花びら。
ひとつ、ふたつ、みっつと口から吐き出されるそれ。
なんの花か、知識のないカラ松には分からない。
……ただ、
自分の吐き出した花びらがあまりにも綺麗だったから、
────俺の恋心はすごく穢れのない綺麗で美しいものなんだなぁ、と。
吐き出した花びらを見つめながら、カラ松は思っのだ。
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作者名:黒茶漬け | 作成日時:2019年6月29日 21時