Prologue.4 ページ4
学園長はかなり驚いた様子だった。ジャミルさんも困ったように肩を竦める。
「なぜうちの寮にあれがあったのかは分かりません。宝物庫の出入口は一つしかないし、あれだけ大きな棺を移動させるとなれば、目撃されていてもおかしくはないと思うのですが…」
「なんだか嫌な予感がしますねぇ。その棺は後で私が回収しに行きます。…今はとりあえず、あなたです。」
びしっと指をさされ、わたしは思わず肩を硬らせる。
「というかなぜ拘束されているのですか?」
「あぁ、一応怪しいので私が拘束しました。今解除します。」
ジャミルさんがまたペンを一振りすると、手首の拘束が解けた。わたしはひとまずほっとする。
「あなたの元いた場所の地名はわかりますか?」
私が地名を言うと、学園長はさらに驚いた顔をした。
「…な、なんと!!!監督生の言っていた地名と同じではないですか!?」
「監督生…?」
「あぁ、失礼…。実はあなたと同じで、気がついたら異世界からこの世界に迷い込んでしまったという人がいるんです。」
「そうなんですか!?あ、あの、それってよくあることなんですか!?」
「いいえ。あなた達が初めてですよ。全く僕が学園長になってからこんなイレギュラーなことが立て続けに起こるなんてどうなっているのやら…」
なにやら学園長がぶつぶつと言い出したので、今度は私が質問をする。
「あの…ここはどこなんですか?異世界、ということは、私の元いた世界とはだいぶ遠いところなんですよね?」
「ここは、ツイステッドワンダーランド屈指の魔法士育成学校、ナイトレイブンカレッジです。あなたの元いた場所と遠いのかどうかすらわかりません。次元が異なる世界から、何らかの不手際があってこちらの世界に飛ばされたわけですから、そもそも距離の感覚では測れませんね。」
「…う、うそ…。ツイステッドワンダーランド?そんなの聞いたことがない…」
随分と凝った夢だなとは思ったけれど、改めて頬をつねってみると確かに痛いし、なにより拘束されていた手首も、棺から飛び出して床に転がり落ちた時にぶつけた体も所々まだ痛んでいる。
…これは夢ではない。現実なのだ。
「どうやったら帰れますか…!?」
「帰る方法は分かりません。今探している途中です。あぁでも困りましたね。一応、あなたの適性を闇の鏡に聞いてみましょう。まぁ、監督生と同じでしょうが」
そう言って私は学園長に別の部屋へと案内された。無数の棺が浮かんでいる大広間だ。
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リオ - 更新頑張ってください! (2021年2月27日 14時) (レス) id: af465deb02 (このIDを非表示/違反報告)
星 - 小説とても面白いです!私はカリムとジャミルが大好きです!更新頑張って下さい! (2020年12月12日 16時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らの | 作成日時:2020年11月8日 19時