12. ページ21
「…すまない。こいつがどうしてもお前に会ってみたいというから、連れてきてしまった。」
ジャミルさんは、なぜか少し疲れた様子だった。
一方、もう一人の方はニコニコと明るい笑顔のままだ。私に会いたいなんてどういうことなんだろうか。
「ジャミルから聞いたぞ！お前今日からスカラビアの雑用係なんだろ？」
「はい…。そうみたいです。」
「しかも女の子じゃないか！ユウと同じで魔法使えないんだろ？」
「はい……」
「本当に大変だったな…。昨日いきなり知らない世界に来たっていうのに。色々と不安だろう？もし嫌だったら雑用係なんて断ってもいいんだぜ？」
「は……え…？？？」
予想外のことを言われ、思わず変な声が出た。
「いいんですか断っても！？」
「おいカリム、勝手なことを言うな！」
ジャミルさんが慌ててその人の肩を掴んだ。
(……え、今カリムって言ったよね…？ということは、この人がスカラビアの寮長…！)
「ええ？なんだよジャミル。いいだろ？」
「学園長との取り決めだ。そんな簡単に取り消せない。」
「でも、こんな小さくて細い人間の女の子だぞ？スカラビアでこき使うなんて可哀想じゃないか。なあ？」
なぁ、と言って私を見るカリム先輩が、私にはその瞬間天使に見えた。
いろんな人から無茶振りばかりするとか我儘だとかいう話を聞いていたからてっきり横柄で傲慢な人だと思っていたのに、めちゃくちゃいい人じゃないか。
「カ…カリム先輩…。ありがとうこざいます！もっと言ってやってください！！」
「なっ、君も調子に乗るな！」
ジャミル先輩に睨まれてしまい、私は肩をすくめて黙った。
「はぁ……こうなるだろうと思ったから連れてきたくなかったんだ…。」
「ジャミル…どうしてもだめか？」
「だめだ。というかそもそもお前のせいなんだよ。今月何回宴の予定を入れたと思ってる？今少しでも人手が減れば、今後はできなくなるからな」
「ええっ？それは困るな。…でもいくらなんでもAが可哀想だ。」
「もし彼女を雑用係から外したら、彼女は学園長との取り決めに背いたことによって強制退学にもなり得る。この世界に身寄りもいない彼女が退学になれば、見知らぬ土地を路頭に迷い、もっと可哀想なことになるだろうな。お前のせいで。」
「そうなのか！？そんなことは絶対にだめだ！
…よし、A、やっぱりスカラビアの雑用係になってくれ！」
「えぇ〜………」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 62人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リオ - 更新頑張ってください！ (2021年2月27日 14時) (
レス) id: af465deb02 (このIDを非表示/違反報告)
星 - 小説とても面白いです！私はカリムとジャミルが大好きです！更新頑張って下さい！ (2020年12月12日 16時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らの | 作成日時：2020年11月8日 19時
