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「よかったな。正式に学園に入れて。」
1年の教室までの廊下を歩いている途中、突然ジャミルさんがそんなことを言い出した。
「なにが良かったですか。全然良くないですよ。スカラビアの雑用係も正式に任されてるんですから。」
「いやぁ本当に良かった。人手が足りてなかったんだ。」
そう言ってジャミルさんは嫌味ったらしく笑う。まだ出会ったばかりだが、本当にこの人は意地悪だ。
「そもそも、何にそんな人手が足りてないんですか。あとカリムさんって誰ですか。私何にも知らないんですからちゃんと教えてください」
「カリムは…俺の主人でスカラビアの寮長だ。放課後に改めて紹介するさ。あいつのわがままのせいで、色々と仕事が増えて人手が足りてないんだよ」
昨日ユウが言っていたことを思い出した。確かユウもカリムって人の機嫌で宴が開かれるとかなんとか言ってたような気がする。もしかして相当な横暴者で我儘でジャミルさん以上に意地悪な人なのかもしれない。
「主人って……。じゃあジャミルさんは従者なんですか?高校生なのに?」
「あぁ、そうだ。生まれた時からな。」
「生まれた時から……なぜそんな長い間、カリムさんの従者を続けているんですか?」
「…俺が好き好んでやってるわけじゃない。家系上、決められてることだからな」
そう言ったジャミルさんの横顔は、少し寂しそうでもあり、怒っているようにも見えた。
(あまり触れちゃいけない話題だったのかも…)
なんだか気まずい雰囲気になり、とっさに話題を変える。
「そ、それにしても。ジャミルさんって髪が綺麗ですね!」
「……は?なんだ急に」
「男性でこんなに髪が長い人は初めて見ました!毛先までサラサラストレートで羨ましいです。私見ての通り癖っ毛なので。」
「…まぁ一応身だしなみには気を遣っているからな。ボサボサの頭でカリムの横に立つわけにはいかない。」
「なるほど…。その編み込みも自分でやってるんですか?」
「そうだが…」
「すごい!わたし三つ編みすら上手くできないんですよ。しかも自分で自分の髪を編むのって難しくないですか?」
「そうだな…コツはいるが慣れれば誰だってできる。ちょっとこっちに来い。」
ジャミルさんは急に立ち止まって私の方を向いた。よくわからないまま言われた通り近づくと、突然ジャミルさんの手が私の髪に触れた。
私に合わせて少し屈んだジャミルさんと顔の距離が近くなり、一瞬ドキッとする。
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リオ - 更新頑張ってください! (2021年2月27日 14時) (レス) id: af465deb02 (このIDを非表示/違反報告)
星 - 小説とても面白いです!私はカリムとジャミルが大好きです!更新頑張って下さい! (2020年12月12日 16時) (レス) id: 43b4052d04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らの | 作成日時:2020年11月8日 19時