《１７０》 ページ25
【XANXUS side】
俺はこの女の新しい一面を見てショックを受けたわけじゃ無い。
獲物を喰らうようなその目が怖いとも思わ無いし、人に刃を向ける事に一切の躊躇いがない事に引いたわけでも無い。
ただ、こいつには俺の知らない部分がまだまだ沢山あると言う事実。それだけが俺の心を妙なほどに揺さぶった。
「おいおい…クソガキがクソガキ守ってナイト気取りか？」
「ぶははっ！ナイトは男のことを言うんだろうが！男が女に…しかも歳下に守られてりゃ、世話ねえなあ…」
「…ていうか、こんな盗人がナイトなんかになれねーだろ？ぶぶっ…」
わざとらしく笑いを堪える様に自身のプライドが壊れるのを感じながらも、力が体に入らぬせいで何もできやしない。
それなのに、なんだってコイツはこんなにも他人の事に怒りを露わにしているのだろうか。
俺を庇うように前に立つ小さな体が震えているのは、自分よりも大きい人物を複数人も相手をしているからでは無いことは、纏うオーラから感じ取れた。
「てっかいして！」
拳を強く握るや否や、その場に響く少し高い女の声。
ゲラゲラと下品に笑い転げていた大人達はその叫びを聞けば、視線は再び一点に集まった。
「さっきからこのガキ、何なんだ？」
「…どこかで見た事あるような…」
「わたしがだれだってかんけいない！おにいちゃんにいったことぜんぶ、てっかいして。
このおにいちゃんは、おじさんたちよりもっともっとつよくてかっこいいんだよ！？」
大人達から生まれた一つの疑問を考えさせる時間など、女は与えない。
言葉と同時に放たれる殺気は子供とは思えない程に場を震撼させた。
異様な程の殺気を大人達が何も感じ取らないはずもなく、1人は思わず足が竦みその場に崩れ落ちる。
他2人は怯みながらもこんな子供に負けるわけがないという自信があるのだろう。たちまち戦闘体制に入れば、女は怪しげな笑みを漏らした。
「…わたしのたいせつなおにいちゃんをばかにするのは、ゆるさない」
一歩、また一歩と近づく距離。
女の握る刃が再び牙を剥けば、あとは一瞬だった。
「ッ、ま、さか…っおまえは、傲慢兄妹の…っ！？」
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年9月21日 21時
