《１６６》 ページ21
男の子の腕の中は、とても温かかった。
温もりをもっと感じたくて更に強く抱きつくと、時々小さな嗚咽にも似たような声が聞こえて来た。
それと同時にほんの僅かに震える体から泣いているんだろうと察してしまった私は、何も言えずただその温もりを感じているだけだった。
声を抑えているのはきっと泣いていることを知られたく無いから。それなら安易に泣かないでなんて声もかけられる訳がない。
男の子も何も言わないから、この反応が正解だったのかはわからないけれど、しばらくすれば兄とは違った、慣れないと感じ取ることのできるぎこちない男の子の手が私の頭を撫でてくれた。
「……菓子、落ちてんぞ」
「へっ？あっ…！あぁぁ〜…」
私が察しているのを気づいてか、その事から意識を逸らさせようと床に散らばるお菓子を指差す男の子は、私が慌てた様子で拾い始めるのを見て頬を緩ませる。
先程と同様に拾っては落とし、また拾ってと、同じことを繰り返していれば、不意に男の子と目線が合う。
「ったく、しょうがねえ奴だな。寄越せ」
「えへへ、ありがとうあかとくろのおにーちゃんっ」
はい！と持っていたお菓子を託し、私は残りの散らばった数個のお菓子を抱えては男の子を見やる。
男の子は私の準備ができたのを確認しては、ついてこいと先を歩き出した。
「こんな量の菓子持って来てどうすんだ？」
「あかとくろのおにーちゃんにたべてもらいたかったの！このあいだのおれいなんだよ！」
「………そうか」
私を見据えていた紅い瞳が不意に逸らされると、私はきょとんと首を傾げる。
そんな私に気づいているのかいないのか、男の子はなんでもないとだけいいつつも何処か気まず雰囲気が漂い始めた。
何も話すことなく、空間には2人の足音が響く。
時折現れる大人たちは汚い野次を私達に向けてくると、私の手をきつく握ってくれていた。
ごめんなと、
何に対しての言葉かわからない謝罪が聞こえれば、私は応えるように握られた手を持てる力で握り返した。
「弱えやつ」
「むぅ…よわくないもん！」
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年9月21日 21時
