《１４８》 ページ3
「…だぁれ？」
「この辺に住んでる奴だ。…お前は？誰か探してんのか」
「おにいちゃん…いなくなっちゃったの…」
男の子の問いかけに小さく呟くなり、私は改めて兄とはぐれたことを実感し不安から涙を浮かべる。
そんな私を安心させようと、男の子は頬を緩めながら私の頭を撫でた。
「泣いてんじゃねぇよ。俺が一緒に探してやる」
土地勘もない場所での迷子故に不安は大きかったものの、その男の子の一言に私は何故か少しの安心感を覚える。
ほんと？と問えば男の子はその紅い瞳を細めて私にまた笑いかけた。
次いでポケットを探るなり差し出された手には個包装されたお菓子。きょとんとした顔で男の子を見れば、躊躇う事なくその小袋を破り中身を私に差し出す。
「甘いのを食うと元気出るからな。これ食って元気出して、おまえの兄貴を探すぞ」
小袋の中から出てきたクッキーは、ほのかにバターの香りを漂わせる。
ずいっと顔の前に差し出され、私はそれを躊躇いがちに受け取るなり軽く齧れば、今度は口の中にバターの風味が広がった。
「…おいしい…」
「フッ…当たり前だろ。俺のお気に入りだからな」
広がる甘さに思わずふにゃりと笑みを溢すと、男の子は自信満々に笑う。
これも食えと、再びポケットを探り差し出されたお菓子を私は今度は躊躇いもなく受け取るなり口へ運ぶ。
先程のクッキーとは異なる甘さに私は繰り返し笑みを溢すと男の子は嬉しそうに笑っていた。
「元気でたか？」
「うん！ありがとう！あかとくろのおにいちゃんっ！」
「あかとくろのおにいちゃん…？」
咄嗟に口から出た固有名詞とも思える言葉に、男の子は少し戸惑ったような表情を浮かべる。
名前を教えて貰っていないことを伝えると、今度は少し困ったと言わんばかりに口角を下げるものだから、私も釣られて眉を下げる。
少し頭に手を置き考え込む男の子の顔を恐る恐る覗き込めば、男の子は小さく頷き私を見た。
「じゃあ今日から俺は、お前の赤と黒の兄貴になってやるよ」
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年9月21日 21時
