《９７》 ページ1
「そこ退いてくれないかなー…私、中に用があるんだけど」
ヴァリアー邸へと戻ってきて一週間ほどが過ぎた頃。
私はここに帰ってきてから毎日、そして今日も変わらず同じ部屋を訪れようとしていた。
中に人が居ようが居なかろうが私には関係ないため、礼儀程度にノックをしようとしたところに目の前にいるこの男、レヴィに肩を掴まれ阻まれてしまったのだ。
「貴様が毎日ボスの所へ訪れるとボスが迷惑だと思わんか！自分の部屋へ戻れ！」
「私は許可もらって来てるんだよ？」
「ぐ…っ、き、許可があってもだ！毎日来てたらボスの休まる暇がないだろう！」
ぐちぐちと私に説教を始めるレヴィ。こうなってしまったらもう止まらないだろう。
適当に相槌を打ち話を聞き流し、キリのいいタイミングで一度出直そうと考えていたけれどこの長々とした説教は終わりが見えない。
決して先輩であるレヴィを見下すわけではないけれど、ヴァリアーのみんなからあそこまで弄られる理由がよくわかる気がする。
普段はいい先輩なのにボスが絡むと途端に面倒になるこの性格、なんとかならないものなのか。
「ごめんレヴィ、出直すよ。それじゃあね」
「貴様！話はまだ終わっとらんぞ！」
肩を掴む手を簡単に振り払えば、私はボスの部屋を背に歩を進めた。
後ろではレヴィが待つよう私を制止していたけど私はそれに付き合ってられるほど暇と余裕はない。
けれど不覚にも、レヴィの一言に足を止めてしまった自分がいた。
「……ねぇレヴィ、何て言ったの？」
「聞こえなかったか？何故貴様なんざがボス補佐に任命されるのかわからんと言ったのだ！」
「…そっか」
そんなの、私が一番わからない。
けれどこんなことを言われても言い返せる程、自分に実力があるとも思えなかった。
やっぱりレヴィだけでなく他の幹部も祝福はしてくれたものの、知らない所で私の存在に異義を申し立てているのだろうか。
何も言い返せずただその場に棒立ちになる私を見て、レヴィは良い機会だと思ったのか更に言葉を続ける。
そう、私が一番言われたくない言葉。
「貴様など、スクアーロがいなければヴァリアーに入隊など出来なかった癖に！力もないくせに兄がヴァリアー幹部だからって贔屓にされやがって！女を使って幹部になったんだろう？！汚らわしい奴め！」
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年8月3日 14時
