《３》 ページ7
「もう！からかわないでよ！」
「悪ぃ悪ぃ、可愛くてなぁ」
久しぶりの再会を楽しそうにからかわれれば少しぐらいむくれたくもなるだろう。
軽い握り拳で兄をぽかぽか叩いていれるとそれを軽々と制止して撫で乱してくる。
なんとも言えない感覚を胸に感じながらも懐かしさを噛み締める私に、兄は家を出てからのことを少し話してくれた。
家を出た後、兄は当初の目的通りマフィア学校へと入学していたという。
剣を極めいくつもの最強と呼ばれる剣士を倒し尽くしたこと、当時ヴァリアーの当主を務めていた剣帝と呼ばれるテュールを倒し自分はヴァリアーのボス候補だったこと。
その後ボンゴレ9代目の御曹司であるXANXUSと出会い、一目見てついていこうと決めたことや髪を伸ばしている理由まで、聞かされた話は様々だった。
その話に喜ぶ私を見たら兄はその都度一緒に笑ったり、悲しむ私を見れば申し訳なさそうに頭を撫でてくれた。
変わらぬ兄の優しさに思わず口元が緩んだのはきっとバレているだろう。
「んで、なぁ…今日ここまで来たのは野暮用だけじゃねぇ。
Aおまえ、ヴァリアーに来ねえかぁ？」
「……、…はい？」
「だからヴァリアーだぁ。俺が今いるところ。もう何年もAを入隊させるよう説得してようやく許可が降りてなぁ…」
やれやれと言わんばかりの兄だが、私は思わぬ発言に硬直していた。
そんな私には気づきもせず、ああじゃないこうじゃないやらあのクソボスがなどと呟いている。
はっと我に変えれば兄に詰め寄り、そんなことより！なんて掴みかかっていた。
「どういうこと！？私がヴァリアー！？どうしてなんで！？」
「ゔおおぃ…落ち着けぇ…」
そんなこと聞いて落ち着いていられるわけがない。
あまりの気迫だったのかやや後退る兄に詰め寄りどうしてなんでの怒涛の攻め。先ほどと立場が逆転したみたいだ。
どうどうと宥めている兄は私に一言。
その言葉に恥ずかしいような嬉しいような、むず痒さを感じながらも私は仕方ないと言って同意した。
そうと決まればと、少々の不安を抱きつつ私は足早に自宅へ戻り荷物をまとめて空港へと向かった。
兄は諸々の手続きをしてくれるらしい。
そんなに即日で出来るのと問えば何が何でもやらせると言っていた。
これからは毎日、大好きなお兄ちゃんと過ごせるんだ。
そう考えたら全ての表情筋が緩むのは簡単だった。
『これ以上大事な妹と、離れてるのが辛いんだぁ』
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年6月15日 18時
