【REBORN!】だいすきお兄ちゃん (ページ46)

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《４２》ページ46

【スクアーロside】

聞き馴染みのある足音。少し遠慮がちなノック音。
気配なんて感じ取らなくともそれがAだというのはわかる。
返事をしなけりゃ帰るかと思ったのに、扉が静かに開けられればこちらに近づいてくる気配。
俺に気を遣っているのか、物音を立てぬよう忍足でこちらに歩みを進めているようで、漂う空気には緊張が少し混じっているようにも感じられた。
本当ならそんな気を使わせないでAを呼び寄せこの腕で抱き締めてやりたい。
いつものように頭を撫でてやれば笑うAをずっと見ていたい。
それなのに自覚してしまった己の気持ちのせいで、本音とは真逆の行動が次々と出てきた。

「……何しに来た、二度と来るなって言ったろうがぁ」

違ぇ、こんなこと言いたいんじゃねぇ。
さっきは悪かったと、そう言いたいのに出てくる言葉は皆憎まれ口ばかり。
口を開けば開くほどに出てくる言葉はAをどれだけ傷つけてしまったのか、自分に言っているのかと震える声で問いてくる。
Aが姿を見せたときに自分がどれほど嬉しかったかなんて、今更Aに伝える術がわからない。
合わせる顔なんてなけりゃ、視線を交わすことすらできやしねぇ。

「当たり前だろ、テメェもあの場にいたじゃねぇか」

俺が放った言葉は、Aの心にトドメを刺すには充分過ぎたのか、隙間から覗くAの顔は意気沮喪したように歪んでいく。
掠れながらに聞こえたその言葉は本来なら俺が言わなきゃならねぇ言葉なのに、
部屋から去るその目に反射する涙が見えた気がすれば、俺は舌を鳴らしていた。

「っ…何をやってやがんだ、俺は…」

先程まで本音と裏腹に行動していた自分が嘘のように、まだ言うことの聞かない体を動かしていた。
今だけはこの体がまた傷つこうがこれから先動かなくなろうがどうでも良かった。
間に合わない可能性なんていくらでもあったが、ここでAを追いかけないと言う選択をすることなどできるわけがねぇ。
幸いにも各階に止まるエレベーターにAは乗り込んでいたようで、ロビーへの直通エレベーターはすぐに1階を告げる。

行き交うクソ共はいつも以上に煩わしいのに、求める人物だけはすぐ見つけられた。
自分の気持ちを知られようがそれで嫌われようが、今更知ったことではない。
Aを傷つけたままで、それが原因で泣かせたままでいるのだけはどうしても解せなかった。

「A！！！」
その名を呼べばAは涙を流しながら振り返った。