《３６》 ページ40
静かな空間に、人の行き交う足音が響く。鼻にはツンとくる消毒液の匂い。
どこの御一行様かというぐらいの大所帯で私たちはボス達の入院する病院へきた。
ただでさえ大人数で目立っているというのに、跳ね馬の部下が皆黒のスーツを着用しているせいで余計に視線が私達に集まってしまう。
ボス達の病室は一番上の特別室を取っているようで、当たり前にエレベーターへ乗り込めば定員オーバーのブザーが響いた。
普通に考えてわかるだろうと、これにはマーモンとベルと3人で顔を見合わせて溜息が出た。
「せっかくなんだし、兄妹水入らずで話してくれば？」
「僕たちは先にボスのところに行ってるからゆっくりしてくるといいよ」
2人は手をひらひらと振りながらフロアの奥に進んでいく。
隣にいた跳ね馬と目を合わせると、行こうかと背中を押してくれた。
病院だからかいつもよりも静かな空間に、小さく扉を叩けば中から兄の声がした。
「来てくれたのかぁ」
顔の包帯はまだ完全には取れていないものの、表情を確認するには充分だ。
私の顔を見るなり笑みを溢した兄は私を手招きで呼び寄せる。
その笑みと手招きに引き寄せられるかのようにして、私は兄へと飛びついた。
どうした？と変わらぬ声で問いかけながら頭を撫でる手は、いつも以上に暖かい。
耳はしっかりと胸元に。しばらくは兄の鼓動を毎日聞くのが日課になりそうだな、なんて思いながら感じる心臓は少し脈が早く感じた。
他愛もない話を少ししていると、兄は顔を顰めて入り口に立つ人間を呼び寄せる。
「おい跳ね馬ァ…せっかくの妹との時間なんだ、ちったぁ気ィ使えねぇのかぁ？」
「おいおい…んな無茶な、っやめろってスクアーロ！」
「なら外で待つとかしとけぇ！！」
跳ね馬の胸ぐらを掴み怒号を浴びせる我が兄。
普段なら宥めに入るところだけれど、今回ばかりは兄に賛成なため私はその場で静観する。
跳ね馬は私に助けを求めているけれど、私が一切口を開かずなのを見れば何度も裏切り者だと叫んでいた。
「裏切るも何も、跳ね馬の味方になった覚えないよ？私もお兄ちゃんとゆっくり過ごしたいからほら、しっしっ」
「なんだそれ！俺は虫かよ！」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 34人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まいたけ | 作成日時：2023年6月15日 18時
