《３４》 ページ38
「私はあなたと慣れ親しむつもりはない」
「つれねーのな。友達になるくらいいいじゃねーか」
「しつこい。嫌だって何回言えばわかる？」
私と友達になりたいと言う山本武と、友達になりたくないと言う私。
幾度となく差し出された手は同じ数だけ払ってきた。
普通は一度断られたら諦めるはずなのにこの男はしつこく何度も交友関係を迫ってくる。
みんなもこのやりとりに飽きたのか欠伸をしたり溜息をついたりと様々だ。
「ディーノさんとは友達になったんだろ？なら俺もいいじゃねーかよ」
「跳ね馬は特別なだけ。本当ならあなたは私の視界にすらいれたくない」
嫌われたもんだなーなんて呑気に笑う山本武がやかましくて仕方ない。
話題に上がった跳ね馬は何故か顔を赤らめていて、兄はそんな跳ね馬を睨んでいた。
そんな中我関せずとしていたベルとマーモンはいつまで続けるのかと私の顔を見てくる。
早く帰って休みたいのだろう。
疲れている2人を休ませたいし助かったとは言え兄の体調や怪我の具合も心配だ。
けれどキャバッローネの監視下に置かれている以上、跳ね馬が動かない限りは私達も動けない。
山本武がもう何度と繰り返した口を開きかけたとき、意外な人物がこの流れを止めてくれた。
「…ねぇ君たち、いつまでそこで群れてるの？」
先程まで姿を消していた雲雀恭弥の体には、手当を受けたのか包帯やらガーゼやらが貼られていた。
大空戦で相当疲弊はしているはずなのに、意外にもしっかりとした足取りでこちらは近づく腕には当然のようにトンファーが握られている。
慌てた顔で解散を宣言しようと跳ね馬は口を開くが、もう手遅れだ。
好戦意欲丸出しでこちらへ迫る雲雀恭弥はすでにトンファーを振り上げていた。
「っ、とに…、沢田綱吉の守護者にはまともな人間はいないわけ！？」
刃が下ろされたトンファーを受け止めれば金属が擦れる音が響き渡る。
たちまちもう一方のトンファーが私目掛けて振り下ろされるが、一蹴りすれば持ち主は小さく呻き声を上げその場に片足をついていた。やはり大空戦での消耗は激しかったようだ。
ベルは茶化すように口笛を鳴らし、逃げるのかと言って私を睨む雲雀恭弥に兄は口を開いた。
「今のお前なんかがAの相手になるわきゃねぇ。俺の妹であり、一番の弟子だからなぁ」
口角を存分に上げて笑う兄に照れ臭さを感じながら、私達は跳ね馬に帰宅を懇願する。
その場に残された山本武は、跳ね馬の部下が送るとかなんとか。
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年6月15日 18時
