【REBORN!】だいすきお兄ちゃん (ページ20)

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《１６》ページ20

唇から感じる初めての感触。
目の前には息すらかかる距離にある兄の顔。
いまがどういった状況なのかを理解するにはさほど時間を要さなかった。

「ご、ごめん…っ！」「悪ぃ！」
兄も理解したのか、同時に背けられる顔と顔。
沈黙する空間がより一層、私の心配数を高めてくる。

密かに後ろを振り返り兄の様子を伺うと、兄は足を組み頬をかいていた。
今更気づいたが、兄はシャワー浴び終わり。
まだ乾ききっていない髪からは雫が垂れ、それが体を這うと途端に色気が増す。
ただでさえ何もしていなくとも人を魅了するほどなのに、それに加算させたら蠱惑的になるのは当たり前だ。
無意識のうちに私は兄へと手を伸ばし、しまいには体に腕を回していた。

「……あの、ごめんね、お兄ちゃん…。
こんなの、き、キスは事故だし、アレだけど……———」

それじゃと言い残し私はそそくさと脱衣所を後にした。
兄はぽかんと口を開けていたけれどそんなの知ったことじゃない。

部屋へと戻り、とにかく今は日本へ行く準備だと言い聞かせて忙しなく動き回る。
まずは自分の荷物を一通りまとめ終え、次には兄の分を進めていたところで手が止まる。
兄も恐らく一通りの隊服は当たり前に持っていくだろうが、他に何か必要なものはあるだろうか。
思えば私は最近の兄のことを全然知らない。
まだ再開して数日。兄は任務だなんやで部屋を空けていることが多かったし、かくいう私も他の幹部の方々の手伝いやらで追われていた為、ゆっくり話せたのは初日だけだった。

そんなことを考えていたら兄が脱衣所から出てきて、こちらへ向かってくる。

「あっ、お兄ちゃん！持っていく荷物の、こと……なんだけど…」
せっかくだから兄に確認してしようと思い声をかけたものの、兄は私に目もくれず部屋を出ていってしまった。
聞こえていなかったのだろうか、なんて思ったりもしたけれど、眉間に皺を寄せていた兄を見ればそうじゃないことが伺える。

あんなこと、言わなければよかっただろうか。
—————嫌じゃなかったよ。なんて。