《８》 ページ12
【スクアーロside】
「…っっざけんじゃねぇえ！！大人しくソファにでも座っとけぇ！！！」
わざわざ浴室まで声をかけにきたから何かと思えば、シャワーを手伝うだぁ？
Aの考えることがよくわからねぇ。
兄弟と言えども年頃の女が異性へそんなことを言うなどあってはならないと思い注意をするつもりだったが、思った以上に声が出てしまい自分でも少し驚いた。
頭の中はどうなっているのか、
一体何を考えれば異性のシャワーなんかを手伝おうと思うのか。
それとも誰かにそういう事を教わり、Aの中ではそれが当たり前になっているのか。
俺の妹が他の男に…、なんて考え始めたら怒りが募る。
「Aのやろう…俺の知らないところで男でも作りやがったなぁ…」
呟く言葉はおそらくソファにいるであろうAのところには届いていない筈だ。
男がいるのであればどんなやつか聞き出し、Aに見合う奴なのかを見定めてやらねばならない。
そうと決まれば俺はシャワーを早々に切り上げAのところへ急いだ。
「A…？」
部屋へ戻ればやけに静かだった。
ソファを見やればAの姿はなく、薄暗い部屋を見渡すとどうやらデスクにいたようだ。
起こさぬように近寄ると聞こえてくる小さな寝息。
口に入るAの髪を直しても起きる気配はなく、よほど疲れた様子が伺える。
口元に笑みを浮かべて眠るAの手には、立てかけてあったはずの写真立てを見つけ少し恥ずかしさを覚えた。
映るのはまだ幼い頃のAと俺。
あの日、俺が家を出る事を決めた日に撮った写真は、デスクに座ればよく見える場所に飾っていた。
目の前で眠るAは写る頃とさほど変わらぬあどけなさで、しかし10年の空白の期間に成長した姿はそこに麗しさを纏い、一目見た時は柄にもなく緊張した。
正直言うと、Aをヴァリアーへ入隊させるなどしたくはなかった。
けれどそれ以上に離れている事のもどかしさが勝ってしまい、幾度となく上へかけあった。
許可がおりた時は自分で切り出したものとはいえ随分悩んだが、俺の下にもつかせていいと言われて決めた。
「Aは、俺が守ってやるからなぁ…」
当初の目的など忘れ、眠るAを抱き上げベッドへとおろす。
呟いた言葉は聞こえているはずはないけれど、Aはどこか嬉しそうだった。
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作者名：まいたけ | 作成日時：2023年6月15日 18時
