20話 ページ20
〜小狐丸side〜
村雨はあの日以来三条の部屋に来ることは無くなった。
本丸内でも行方が知れないことが多く心配で就寝前に部屋を尋ねたが不在だった。
今日は久しぶりに村雨と内番が被っていた。
村雨の好きな畑当番で話が出来るなと、嬉しく思った。
朝餉に来ていないのが気になったが畑に出ると村雨は既に来ていた。
畑当番だからさぞかし元気なんだろうと思っていたが、水道の前に突っ立ってぼーっとしていた。
｢村雨……？｣
｢あ……おはようございます！｣
｢朝餉に来てませんでしたが、大丈夫ですか？｣
｢あぁ……ちょっと寝坊してしまって……｣
えへへと笑った村雨の目元にはクマがあって頬が腫れている。
｢村雨……頬が……｣
痛々しくて手を伸ばすと、後ろにじりっと後ずさった。
｢あの……あるじさまを、その……怒らせてしまって……。｣
気弱に微笑むと慌てて髪で頬を隠した。
｢そうですか……｣
その後彼女は何事も無かったように元気に仕事をしていた。
2人きりで話すのは久々で、話が弾んだ。
｢さ、そろそろ戻りましょう。｣
夢中な村雨に声をかける。
｢はーい！｣
立ち上がった村雨の身体がぐらりと傾いた。
｢おっ……と……。大丈夫ですか？｣
｢…………。｣
ぎゅっと目を瞑った彼女の顔色が酷い。
｢村雨……？｣
｢あっ……！えと……ごめんなさい！大丈夫です……！｣
｢本当に大丈夫ですか？｣
｢はい、ごめんなさい。｣
｢いや……中に入って水を飲んだ方が良いですね。｣
母屋の方へ歩いていくとひょこひょこついてくる村雨の歩き方がおかしい。
左足を庇うように歩いている。
縁側に腰掛けた村雨の足元にしゃがむ。
｢左足、どうしました？｣
靴を脱がせると足首が腫れていて痛々しい。
｢挫いちゃって……でも、大丈夫です！｣
よく見ようとする前に村雨が足を引っ込めてしまった。
｢全く……我慢は良くないですよ。氷持ってきますから待っててください。｣
やけに元気のない村雨が気になったがとりあえず厨に急いだ。
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作者名：綺衣 | 作成日時：2020年1月23日 0時
