『あぁ、そういう...』 ページ6
いつもより少し豪華な夕飯を食べた後、お風呂を済ませてから二人ソファーに並んで例年通り歌番組を観る。
今年が終わるまであと三十分程。
番組ももうすぐクライマックスに入ろうとしていた。
「雪、降らなくてよかったな。流石の俺でも雪ん中の初詣は寒過ぎる」
『宇髄さん、昔はどんな日でも袖無しでしたもんね』
珈琲を飲みながら、ふと鬼殺隊の隊服を着た前世の宇髄さんを思い浮かべる。
雛鶴さん達が着ていたくノ一の着物を見る限り、袖無しの着物は忍の里の中では主流で、だから宇髄さんも袖無しの隊服だったのかもしれない。
忍とくノ一の服が似たような形なのかは不明だが。
でも、私が宇髄さんの隊服姿を見ていたのは約一年間だけ。
遊郭での戦いで左目と左腕を失った宇髄さんはその後隊服を着ることはなく、私は隊服姿の宇髄さんより着物姿の宇髄さんの方がよく知っていた。
今世では当然失った左目も左腕もあるし、隊服を着た宇髄さんも見てみたいな。
あれから歳はとったものの、宇髄さんの輝かしい美貌は健在どころか、全く変わっていない。
私が着たら痛いだけだろうが、宇髄さんなら似合うだろう。
そう思ってじっと見つめていると、視線に気付いた宇髄さんはテレビから私の方へ視線を移した。
「どうした?」
『いえ、隊服を着た宇髄さんをもう一度見てみたいなって』
「...Aお前、俺いくつだと思ってんだ」
『宇髄さんなら似合いますよ』
「派手にアウトだっつの!」
考えてみれば、今隊服を着るのはコスプレという部類に入るのかもしれない。
でも、世の中には宇髄さんの歳でもコスプレをしている人はいるし、実際みんな似合っているのだから、年齢なんて何の問題もない。
『宇髄さんは昔と変わらず格好良いんですから、全然アウトじゃありません』
心底嫌そうな宇髄さんに、私はぐっと顔を近付ける。
大きな紅い瞳を真っ直ぐに見つめながらそう言えば、宇髄さんは目を見開いた。
「...はぁ〜...変なとこで無自覚だよな、相変わらず」
『はい?...というより、何でそんなに着たくないんです?年齢なんて普段気にしないじゃないですか』
「ンなもん、昔よりも筋肉ねぇから着たところで地味になるからに決まってんだろ」
『あぁ、そういう...』
年越し前にする話ではない気がしながらも、やっぱり宇髄さんは宇髄さんだと改めて実感した。
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美緒ちゃん(プロフ) - 楽しかったぁぁぁぁぁあ!ありがとうございましたぁぁぁぁぁあ! (2022年7月23日 14時) (レス) @page39 id: 4f2d722dc2 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - りとさん» 分かります!あれですね、人の不幸は蜜の味ってやつですね(((特にすれ違いとかもう...いいぞもっとやれ!ってなりますね!((クズ (2022年2月5日 12時) (レス) id: f3367b760e (このIDを非表示/違反報告)
りと - 自分シリアス大好物なのでw(?)夢主ちゃんと宇髄さんが喧嘩するところは毎回にやにやしながら読んでますww(((最低 (2022年1月3日 2時) (レス) @page9 id: cb2121edf2 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - りとさん» いつも読んでいただきありがとうございます!大人な余裕を持った宇髄さんカッコイイですよね...子供っぽい時とのギャップが...!!確かに最近喧嘩してませんもんね、させましょう!(?) (2022年1月1日 21時) (レス) id: f3367b760e (このIDを非表示/違反報告)
りと - 宇髄さん余裕ぶってる態度とってんのいいな…かっこいい…。いつもムフフしながら(?)読ませてもらってます。応援してます!!無理せず頑張ってください!!宇髄さんと夢主ちゃん軽く喧嘩してほしいですw((((え? (2021年12月26日 2時) (レス) @page3 id: cb2121edf2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イリア | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.pnp/sakuramoti
作成日時:2021年12月18日 20時